メルセデス・ベンツがeアクトロス600を発表して、EVトラックの航続距離が飛躍的に伸びることでいよいよ大型EVトラックが現実に使えるモノとなってきた。すると負けじとルノー・トラックスも大型EVであるE-Tech Tモデルの航続距離を延長したモデルを発表、2025年下半期から注文を受け付けるとしたのだ。
日本では馴染みがないが、その名が示す通りルノー・トラックスは、フランスの歴史と実績あるトラックメーカーだ。その歴史はなんと1906年まで遡ることができる。その後、ルノーは国有化されたり、別ブランドであった商用車部門は統合され、シトロエンの商用車部門を買収して合併したりと紆余曲折を経て、1980年にルノートラックのブランドが復活したのである。
しかし2001年にはボルボ・トラックスの傘下となり、現在では乗用車部門とは完全に分離しているが、ボルボのトラックとは全く異なる印象のトラックを提供し続けている。ボンネットのないハイキャブタイプのトラックを最初に開発したのはルノーだと言われており、アイデアと前衛的なデザインはさすがフランス、という印象のブランドだ。
大型EVトラックのE-Tech Tモデルは、新しい電動アクスルが開発され、車軸回りにモーターと変速機、PCUが一体となってコンパクトにまとめられたことで、フレームのサイドメンバー部分にバッテリーを追加するスペースを設けることができた。
これにより航続距離600kmを実現するバッテリー仕様のロングレンジモデルが設定できるようになったらしい。さらに2026年にはMilence社による公共充電インフラネットワークの開発を組み合わせることにより、従来のディーゼル車で運用されてきたトラック輸送と同等の輸送サービスを提供できることになると言う。
Milence社は、ダイムラートラック、トライトン(VWの商用車グループ)、ボルボトラックスグループの3社が合弁で設立した企業で、2027年までにヨーロッパに1,700箇所の高性能公共充電ポイントを建設および運営していくことを目標として掲げている。
ルノー・トラックスのEVトラックは、すでに3000万キロメートルを走行し29,000トンものCO2排出を節約している。今後は電源構成やバッテリーの製造からリサイクルまでの環境負荷など、EVが本当に環境に優しいモビリティとなるための体制づくりも必要となるだろう。
ディーゼルエンジンもバイオ燃料などでカーボンニュートラルを実現しながら使われ続けて、EVトラックとの使い分けで環境問題に対応しながら物流を支えていくことになる。
日本も技術面では決して引けを取っていないだけに、いつまでもダラダラと実証実験ばかりを繰り返さずに、本格的な導入を推進してほしいものだ。全個体電池や窒化ガリウム半導体など、日本が誇れる最新電動技術を惜しみなく素早く投入して、世界を驚かせてほしい。