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かつて、ガソリンスタンドはフルサービスが当たり前で、店に付くと店員が給油口のある方を確認しながらポンプまで誘導してくれた。それに従い、車輌を指定位置に停車したあとは店内でコーヒーでも飲んでいれば、給油・窓ふき・吸い殻掃除・ゴミ捨てなどを終わらせてくれる。運転手にとって、給油は休憩のようなものだったわけだ。
ところが、近年ではセルフ式が圧倒的になってきたから、運転手自身がそれらすべてをやらなければならない。トラックなどの職業運転手なら慣れているかもしれないが、たまにしか運転しないドライバーの中には戸惑う人も少なくない。軽自動車だから、軽油を入れてしまうなどという事故が後を絶たないという。
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言うまでもないが、軽油の「軽」は「軽自動車」のことではなく、「(重油より)軽粘質である」などという意味のネーミングである。軽油やガソリンは、原油を常圧蒸留工程にかけて沸点分留を行うことで作り分けられており、それぞれの性質には大きな違いがあるのだ。
自己着火性が高いという性質を持つ軽油は、空気を圧縮して燃焼室内の温度を高めたところに噴射させ、着火するというシステムを持つディーゼルエンジンに最適な燃料である。逆にいえば、自己着火が可能な燃料であれば、ディーゼルエンジン燃料として使用できるということだ。灯油やA重油などもそれにあたり、軽油取引税逃れといった違法行為に使用される例が後を絶たない。
同じディーゼルエンジンでも、大型船舶用のものは自動車用のものに比べて回転数が少ない。ゆえに、ゆっくりと燃える重粘質のC重油を使用しているのだ。もっとも、この燃料は残渣油であるためにコストが低く抑えられるということも、船舶燃料として採用された要因といわれている。
ガソリンも、軽油と同じく原油から精製している。常圧蒸留工程において、沸点範囲が約30℃~180℃で抽出される「ナフサ」を原料としたものだ。常温での揮発性が高いことから、揮発油とも呼ばれている。引火点が低く、-40℃以下であることから常温でも火種を近づければ発火するという特徴を持つ。
この性質から、ガソリンエンジンは点火プラグが発する火花を利用して、ガソリンと空気の圧縮混合気を着火・燃焼させ、回転力を生むというシステムになっている。このとき、異常燃焼(ノッキング)を防止するために混合気の圧縮比を調整しなければならない。その割合は11:1~12:1程度になるため、必然的にトルクがディーゼルエンジンよりも低くなる。重量物の運搬を担うトラック・バスがディーゼルエンジン、乗用車がガソリンエンジンを採用するのはこういった理由によるものだ。
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ディーゼルエンジンの排気が黒い煙になることがあるのは、不完全燃焼によって煤が発生しているからだ。機構が単純なので必要な力に応じて燃料を噴射するだけでよいのだが、パワーがいるときには多くの燃料を噴射する必要があるので、それを完全に燃焼させるのが簡単ではないのだ。そこで、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター、黒煙回収フィルター)を使用するなどして、排気ガスのクリーン化を図っている。
このように、ガソリンと軽油はその性質が異なるために、使用するエンジンの機構にも大きな違いがある。どちらも車輌燃料として販売されているが、決して混同してはならないものなのだ。間違っても「軽自動車だから軽油」とか、「安いから軽油」などとという判断をしてはいけないのである。
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