意外と身近なレッカー車ってどんなクルマ?

レッカー車とは、他の車輌を吊り上げて引っ張る能力を持つ車輌のこと。多くはトラックをベースに、クレーンなどの車輌牽引機能を架装しており、道路運送車輌法上の分類は「特種用途自動車」だ。「車輌を牽引する」といっても、「トレーラー」を引っ張るような牽引車というわけではない。道路交通法上の「他の自動車をロープやクレーンなどで牽引する場合」にあたるため、普通自動車の扱いになっている(ベース車輌の大きさによっては中型自動車や大型自動車などに該当)。ゆえに、運転免許は「牽引免許」である必要はないのだ。

似て非なる車輌に、キャリアカーがある。一般に、レッカー車は故障や駐車違反をした車輌などを移動させるために使用される。語源には諸説あるが、「レック=壊れているもの」「レッカー=破壊する人」から転じて、「壊れた車輌を排除する車輌」をレッカー車と呼んだことに始まるようだ。

これに対してキャリアカーは和製英語であるが、「キャリア(Carrier)=運送業者」から転じて「車輌を運ぶ車輌」になったようである。すなわち、障害となっている車輌を引っ張って移動するのがレッカー車で、故障車などを含めたあらゆる車輌を載せて運ぶのが、キャリアカーという解釈になるのだろう。

とはいうものの、レッカー車を派遣して車輌を牽引する事業者は、その両方を所持して用途に合わせて使用しているため、レッカー車の出動を依頼したらキャリアカーが来るなどということもある。これらの車輌はクレーンやウインチなどを搭載しているので、先述のように運転は牽引免許でなくてもよいが、それらを操作するために労働安全衛生法に基づく資格が必要になる。

一般から見れば、レッカー車は「トラックの後ろにクレーンがついている車輌」程度にしか認識されていないかもしれない。しかし、実際には様々な装備や最新のハイテク機器が搭載されているのだ。そもそも、レッカー車は広い場所で使用されることが少なく、狭い道路や電信柱などの障害物があるところで作業することが多い。

そこで、まず重要なのが車輌のコンパクト化だ。当然大型のものもあるが、小型トラックベースの車輌でも十分な機能を持つように作られたものが多い。2024年10月に開催された「ジャパントラックショー2024」に出展されていたレッカー車も、コンパクト化・ハイパワー化・多機能化・効率化の傾向が顕著であった。

そのひとつが、レッカー車後部のあらゆる場所に収納スペースが、まるでパズルのように用意されていること。そのなかには、クレーンやリフトに対応する様々な補助具やアタッチメントパーツのほか、各種工具やコンプレッサーなどが整然と納められている。これなら、1台の車輌であらゆる場面に対する効率的な作業ができるだろう。また、クレーンやリフトといった牽引機器については、状況に応じてリアとキャビン内のどちらでも操作ができるようになっている。

さらに注目を集めていたのは、アンダーリフトと一体化しているレッカーブームの起伏角度を変えられる機能。これなら、狭い駐車場やT字路などで作業を強いられる場合でも、短時間で車輌を引き出せるのではないだろうか。また、事故現場などでの横転車輌の引き起こしや、災害現場での救難活動といった出動も想定されるため、それらの作業に対応できる機能の充実も図られている。利用シーンが広がるなかで、レッカー車は今後も進化を続けていくことになりそうだ。

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