昨年フルモデルチェンジしたいすゞのフォワードに総重量15トン以上のモデルが追加された。特徴は米国カミンズ社と共同開発した新型エンジンを採用したこと。DB6Aと名付けられた排気量6.7Lの新型直列6気筒ディーゼルエンジンは、最高出力220kW(300PS)/最大トルク1081N・m(110kgf・m)の十分なパワーを発生するとともに、従来の6気筒エンジンと比べ大幅に軽量化されている。
カミンズは1919年創業でエンジンメーカーとしては世界最大規模を誇る。特にディーゼルエンジンにおいては圧倒的なシェアを持っており、世界中の自動車・重機・船舶・鉄道車輌などのメーカーに供給している。
いすゞとカミンズは、次世代パワートレインの効率的な開発を実現するため、2019年5月に「いすゞ・カミンズパワートレインパートナーシップ」を締結している。両社は中型のディーゼルパワートレイン分野でグローバルに協業することで合意し、今回のDB6Aがフォワードに搭載される最初のエンジンとなるわけだ。
共同開発と発表されているが、開発拠点を2箇所で分散して開発するのは効率が悪すぎるから、いすゞ側が仕様や特性などの要望を伝えて、それに合わせてカミンズ側が開発を行ったと捉えるのが一般的だろう。もっとも、開発と設計はカミンズが行なうが、エンジン自体の組み立てはいすゞが国内の工場で行なうそうだ。
トラックメーカーは厳しい環境規制をクリアしながら、衝突安全性や先進の運転支援システムなど数々の機能を充実させなければならず、開発に注げるリソースには限りがある。
日野自動車も現行のデュトロにはFPT(フィアット・パワー・トレイン社)のエンジンを搭載しているし、三菱ふそうもエンジンはダイムラートラックグループで共用しているものもある。
いすゞもこれまで独自のエンジン技術で名機をいくつも作り上げてきただけに、ちょっと残念な気がするが、これもビジネスの「選択と集中」を実践する一環だろう。ただし大型トラック用のエンジンに関してはこれまでどおり独自開発したエンジンを搭載する方針のようであるから、期待がもてる。
フォワードの15トン以上のモデルに話を戻すと、プラットフォームの基本構造を、海外向けモデルと統一するなどでシャシーフレームを一新。ホイールベースを変更することで前後軸重の重量バランスが最適化され、高積載量を実現している。
トランスミッションは9速AMTのスムーサーFxで、実績のある変速機だけに信頼性は高い。フロントマスクも専用のバンパーヘッドランプを採用。中型車ならではの車格感をダイナミックなキャブデザインで演出している。大型トラックの比率が増えているものの、フォワードも今回の追加設定により総重量22tまでラインナップするなど、大型に近くなっている。