
トラックドライバーにとって、ワークランプは結構大事なパーツ。夜間に街灯の少ない場所にトラックを停め、車輌まわりで作業をしなければならないときには、これがなければ仕事にならないこともある。とくに車輌の陰になりがちな下回りには、必ず装着しておきたいアイテムだといっても過言ではない。
ただ、いうまでもないがこれは車輌の装飾品ではない。ゆえに、道路運送車輌法・保安基準などの法律に準拠する必要がある。灯火類にはそれぞれ役割があるために、意外と細かく基準が決められているのだ。まず気をつけなければならないのは、車体から基準以上にはみ出して取り付けられていないか否かである。とくに鳥居(キャブ後方のシャシー)に装着するときは、大きく車高を超えないように注意が必要だ。
また、車外に装着したものは走行中には点灯させないことが望ましい。走行中に点灯可能な灯火には明るさや色の規定があり、ワークランプはそれに抵触する恐れがある。点灯するときのスイッチにも注意が必要で、運転席から操作が可能な場合は点灯していることがわかるように、パイロットランプを備えたものを用いる必要があるのだ。
このように、法律で細かく基準が決められてはいるものの利便性が高かったため、昭和の頃のトラックにも多数装着されていた。当時は光源が電球で、照射距離を伸ばしたり照射範囲を広げたりするために、大きなレンズが使用されていたこともあり、ランプ自体も大型のものが主流であった。やがて、レンズカットの技術進化やハロゲンランプの登場で、徐々に小型化されている。
革新的であったのは、高輝度LEDの登場といえよう。複数の光源を利用して照射範囲を調整できるため、軽量コンパクトなものが多数商品化された。ところが、LEDにも欠点がある。それは、降雪・低温地域では雪や氷がレンズに付着して光を遮ってしまうことだ。ハロゲンランプは、発光時に発熱するためにそういった心配がない。結果的に、降雪・低温地区を走行するトラックは、ハロゲンタイプを使用するしかなかったのである。

しかし、ハロゲンランプは電球と同様にフィラメントが使用されている。トラックは振動が大きいのでフィラメントが切れやすくなり、どうしても電球の寿命が短くなるという欠点があった。そこで登場したのが、融氷雪機能付きのワークランプである。これは、ランプにヒーター機能を付与することで、付着した雪や氷を溶かすというシステムだ。
ただ、ランプを熱し過ぎるとレンズや本体が変形してしまう可能性がある。そこで、サーモスタットを組み込んで温度調節機能をつけたわけだ。最新型ではランプ内温度を100℃まで加熱すると、サーモスタットが働いていったん過熱を停止。その後、温度が85℃にまで下がると再び過熱を開始する。



これを2度繰り返したあとは、再加熱の設定は25℃に変更される。最初、強力に凍結していた氷雪を短時間で溶かしたあと、電力をセーブして再凍結を防ぐための工夫である。単純なパーツにしか見えないワークランプではあるが、ここにも最新の技術が投入されているのである。