クルマがクルマを運ぶ「キャリアカー」とは?

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トラックは実に様々なものを運んでいるが、なかにはスケルトンの荷台に乗用車を2段に分けて数台ずつ積んでいるものがある。これが車輌運搬車、一般にキャリアカーと呼ばれているトラックだ。

とはいえ、自動車や建設機械などの車輌を積んでいれば、なんでもキャリアカーというわけではない。車輌を搭載し、それを固定するための装置がついていなければならないのだ。ゆえに、街中でよく見る小型ショベルを積んだダンプカーは、キャリアカーに分類されない。

ディーラーの前などでよく見かける荷台が2段になっているスケルトンタイプの車輌は、1度に複数台を運べるから運搬効率が良い。ゆえに、新車輸送・中古車輸送などといった車輌に関わる事業者の利用が多いのだ。

牽引免許が要らず取り回しの良いこともあり、5台積み中型キャリアカーが多く利用されていたが、ドライバー不足や積載効率から、近年では大型やトレーラータイプが主流になりつつあるという。

整備工場やロードサービスなどで使用されるキャリアカーは、1台積みのものが主流である。一般に、キャリアカーへの積み降ろしには搭載車輌を自走させるが、故障車や事故車は自走できないこともあるため、これらの車輌にはウィンチなどの牽引装置がついている。

複数台を積載するタイプは荷台と道路の段差を渡り板で補うことがほとんどだが、1台タイプのなかには荷台がスライドして接地、あるいは傾斜するセーフティーローダー車が多い。

キャリアカーの荷台はリモコン装置などを使用して稼働させるが、その動力にはパワーテイクオフ(PTO)と呼ばれる装置を使用している場合がほとんどだ。これは、走行用のエンジンから必要な動力を取り出す仕組みで、パッカー車・消防車・ダンプカー・クレーン搭載式トラックなど、多くの架装トラックの動力装置として重宝されている。

仕組みは比較的単純で、エンジン回転力をそのまま利用するものや、油圧装置を稼働させるタイプなどがある。キャリアカーの多くは、後者のシステムを採用している。

一般に、キャリアカーはスケルトンや平台タイプの荷台が多く、積載車輌は外部から見える状態になっている。これは、作業性を良くするほかに、車輌総重量を抑える工夫ともいえる。近年は車重のある車輌が増えているため、キャリアカーの自重を抑えなければ積載車輌数を抑える必要性が出てくるからだ。

しかし、箱バンのように積載車輌を風雨から守るようなキャリアカー(正確にはキャリアカーでない場合もある)も存在する。それは、高級車やレースカーを運搬する車輌だ。たとえば、ホンダはバブル経済期に高級スポーツカーNSXを運搬する際、専用の窓付きの箱ボディ車を用意していた。

現在でも輸入高級車のなかには、1台ずつ箱バンで輸送するものがある。販売頻度が低ければ、複数台を運ぶ方が非効率なこともあるのだ。

ただ、キャリアカーは積載物が限定されているために、「2024年問題」によるドライバー不足は、他の輸送事業者より深刻な部分もある。現在は、敢えて箱車タイプのキャリアカーにして、車輌輸送がないときには一般荷物も運べるようにしている運輸事業者もあるぐらいだ。とはいえ、特殊なつくりを持つ車輌なので、その技術が後世に引き継がれていくことを願わずにはいられない。

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