
ガソリンスタンドなどでよく見かけるタンクローリー。ガソリンなどの化石燃料を運搬しているトラックだ。一般的にガソリンスタンドでは、軽油・レギュラーガソリン・プレミアムガソリン・灯油といったものを販売しているから、油種ごとにタンクローリーがやってくると思っている人も少なくない。しかし、タンクローリーの内部は小部屋に分かれており、1台で数種類の化石燃料を運ぶことが可能なのだ。車輌後部などに小部屋の数だけ表示できる掲示板が付いており、そこに積載物名・積載量を記入することになっている。

このような化石燃料を運搬するタンクローリーは「移動タンク貯蔵所」と位置付けられて消防法の規制を受ける。なぜならば、化石燃料は危険物に該当するからだ。車輌には指定された「危」の標識を取り付け、該当する「危険物取扱免状」を持った危険物取扱者が乗務しなければならない。運搬中の事故を防ぐために、静電気対策や消火器などの搭載も必須である。
一般に、タンクローリーは化石燃料の運搬がポピュラーだが、実はこのほかにも様々な荷物を運んでいる。液状の毒物や劇物の多くは、「危」ではなく「毒」と表示される。これは毒劇物取締法の規制を受ける場合で、運搬の際には毒劇物取扱責任者の資格が必要になってくる。
また、天然ガスやプロパンガスなどといった、圧縮された気体(液化されている場合もある)なども、タンクローリーで運ばれる対象だ。これらには高い圧力がかかっているため、「高圧ガス」という表示をしなければならないなど、高圧ガス保安法の規制を受ける。運搬するときは高圧ガス移動看視者講習修了証を持つ、高圧ガス移動看視者の同乗が必要だ。

運搬するのは、何も危険なものばかりではない。牛乳・糖蜜・飲料水などの食用液体を運ぶタイプの車輌や、セメントや家畜飼料などの粉粒体専用車もある。たまに、ピカピカのステンレスタンクを載せた車輌を見かけるが、これは飲料系液体を積んでいるタンクローリーであることが多いという。このように、タンクローリーといっても運ぶ荷物によってタンクの構造や形状、規制される法律の種類などに大きな違いがあるのだ。
タンクローリーはトラックメーカーで製造したパワートレインとシャシーの上に、架装メーカーが製造したタンクを搭載して完成車となる。道路運送車輌法では特殊自動車に分類されており、小型トラックをベースにしたタイプから、トレーラータイプまで幅広いバリエーションが存在するのだ。タンクの形状は、積載物の特性・走行安定性・積載や荷降ろし時の高さ制限などを考慮し、液体の場合は楕円柱で高圧ガスの場合は真円柱を採用している。
このように、タンクローリーは積載物や用途に応じて適切な構造が工夫された車輌だ。「危」や「毒」といったインパクトのある文字を見ると、警戒感を持つのは仕方のないことだが、関連法令に従って安全性は十分確保されているから、決して危ない車輌というわけではないのである。
