パレットどこいった問題とは

物流業界のおける課題は色々ある。人手不足、積載効率の悪化、長い荷待ちと荷役時間、再配達の増加、輸送の小口化など、すべてが解決するにはまだまだ時間がかかりそうだ。そんな中で長年にわたり解決しない問題のひとつが「パレット紛失問題」だ。

物流の効率化を支えるパレットは大量の荷物をリフトで一度に運べるメリットがあり、運送事業者にとっては欠かせないツールなのは間違いない。

しかし、物流業界ではパレットが誰の所有物なのかを意識せず、その場にあるものを使う、という昔からの慣習のせいで、莫大な損害を生み出しているのだ。

他社の所有するパレットを使ってしまう(自社のパレットを使われてしまう)ことで、行方が分からなくなったパレットは年間で約30万枚とも言われている。この損失額は金額にすると十数億円にのぼり、看過できるものではないというのが実情だろう。それにもかかわらずパレットの紛失は後を絶たない。

現在、国内で流通しているパレット数は5億枚、さらに新規で投入されるパレットは毎年2000万枚ほどあるというが、これだけのパレットが毎年破損、流出している計算となる。

プラスチック製平パレットは種類にもよるが、一般的には一枚が数千円~数万円。仮に1枚4,000円として1枚のパレットを利用している会社の紛失率が20%とすると、年間で2,000枚が消え、その補充のために800万円の損害金が生まれる計算だ。

また、どこかの物流拠点で使われずに放置されてしまったケースでも紛失と同じで、稼働できるパレットが減少するため、パレットを購入することになる。

では、さらに、パレットに関する具体的なトラブルを紹介しよう。

パレットを適切に管理するため、本来はパレットに社名を記載しておくことが有効だが、手間がかかり、納品先のルールによっては社名を記載してはいけないケースもあるため、社名を記載せずに使用しているケースも珍しくない。その場合、他社のパレットと見分けがつかないことはもちろん、紛失につながる可能性がたかくなる。

さらに紛失や他社のパレットの持ち帰りが当たり前となった場合、回収漏れや滞留が発生しても気づかず、会社全体での保有数がわからなくなるのも問題のひとつ。保有数がわからなければパレットのレンタルや追加購入をしなければならず、余計な費用が発生してしまうのだ。

こうしたことの積み重ねは悪意循環となり、余計な出費に悩む企業は後を絶たない。

そこでパレット管理の重要性という話になるのだが、それもなかなか難しい一面がある。例えば、PCなどを利用してパレット自体の行き先や返却日などを記録して管理をすることも考えられるが、操作するのは人間のためその労力や手間を考えると現実的ではない。さらに、膨大な量のパレットを人の手で管理しても、記入遅れや記入漏れなどが発生すると効率的な管理が困難になるだろう。

そこで、パレットの管理や紛失問題を解決するために、さまざまなパレット管理システムも増えてきている。その一例を紹介すると「バーコードを用いた管理」「RFIDと呼ばれるICチップを搭載したタグをリーダで読み取ることで情報を取得できるシステム」「GPS、Wi-Fi、Sigfoxなどの技術を利用し、位置情報を取得できるIoTデバイスをパレットに取り付け、パレットの位置情報を定期的に収集・管理する方法」などだ。

こうしたシステムを使うことでパレットの管理は格段に効率化でき、コスト削減や作業効率の向上が見込めるため、パレット管理システムの導入数が増えてきている。

もちろんレット管理システムによってはパレットの追跡や監視(トラッキング)も可能になり、不正使用や紛失のリスクを低減することができるものものあるが、「パレットは会社の大切な資産」という意識を持つことが重要だといえそうだ。

ページトップに戻る