
高速道路には、日々多数の車輌が行き交っている。高速で快適に移動できるから、重宝しているドライバーも多いだろう。しかし、事故や工事があると、パイロンなどを立てて通行規制が敷かれる。走る側からすれば迷惑に感じるかもしれないが、これは安全のために必要な措置なのだ。
一般的に、車線規制の開始場所から鋭角にパイロンを配置して、徐々に当該車線から規制外車線に車輌を誘導する方法が取られる。この部分はテーパーと呼ばれており、当該車線を走ってきた車輌がスムーズに規制外車線に移れるように作られている。とはいえ、これを見落とすドライバーがいないわけではない。そこで、矢板・予告看板・警告灯・人形・バルーンなどを使用して、より強い警告を発しているのだ。
しかし、高速道路は相当のスピードが出ている。一般に、規制が近づくと50㎞/hに速度制限されるが、残念ながらそこまで速度を落としている車輌は少ないのが現実だ。実際に、規制帯に突っ込む事故は後を絶たない。2024年の6月ごろから高速道路各社では公式SNSやパーキングエリアなどで、こういった事故の映像を流してドライバーに注意を促している。それだけ、規制帯への突っ込み事故の発生が深刻な状況にあるということであろう。
こういった事故が起きる原因はドライバーの不注意によるものだが、最も問題視されているのが「ながら運転」だ。スマホ・カーナビ・カーテレビなどを視認・操作しながら運転することで、前方不注意を引き起こしているのだ。高速道路は歩行者がおらず信号もないことから「少しぐらい平気だろう」などと考えるドライバーがいるのだろう。
そこで、1999年から「ながら運転」が取り締まりの対象となり、2019年からはさらに厳罰化されるようになった。この背景には、近年車輌に装着されつつある運転支援装置を、過信して「ながら運転」をするドライバーが増えたことにあるという。運転支援装置は、自動運転装置ではない。にもかかわらず、これを過信してドライバーが前方から目を離すことで、突っ込み事故が発生してしまうのだ。

規制帯内では作業員などが作業をしているが、彼らが危険な車輌を確認してから突っ込んでくるまでの時間は、わずか2秒程度といわれている。作業員は危険を感じたら退避できるように、予め逃げ込む場所を把握しているものの2秒ではかなり俊敏に動く必要がある。そこで活躍するのが、黄色い作業トラックなのである。
本来、このトラックは規制材・作業資材など運搬や規制を知らせる看板といったものを積んでいるが、その後部には異様に大きなバンパーのようなものをつけていることがある。中には、水タンクのようなものを複数積んでいるものもある。これは、衝撃を吸収する装置になっているのだ。すなわち、テーパーのすぐ後ろにこういった車輌を配置し、万一の際には作業員を守る盾になるというのである。もちろん、突っ込んできた車輌の乗員にとっても、できるだけ衝撃を与えないように考えられている。高速道路は車輌速度が速いだけに、事故が起きると被害が大きくなる傾向にある。速度規制を守り、細心の注意を払って運転することで避けられる悲劇があることを、運転者は肝に銘じておきたいものだ。

