新造フェリー就役で進むモーダルシフト

2025年1月21日、「商船三井さんふらわあ」が大洗〜苫小牧間を運行する新造フェリー「さんふらわあ かむい」を就役させた。このフェリーは燃料にLNG(液化天然ガス)を使用した環境負荷を考慮した船で、温室効果ガスの削減にも貢献するエコな新造船だ。同社では同型船「さんふらわあ ぴりか」を今春までにも同航路にて投入する予定だ。

このフェリーの全長は約199.40m、全幅は28.60m、総トン数はおよそ15,600トン。エンジンは三井造船-MAN B&Wの二元燃料機関を採用し、最大出力21,240kW、最大速力24.0ノットのパワーを発揮する。また13mトラック約155台と乗用車約50台を積載でき、旅客定員は157名となっている。

船型は丸みを帯びた流線型の船首や斜めの向かい風を推進力として利用できる「ISHIN船型(Innovation in Sustainability backed by Histrically Innovation in Sustainability backed by Histrically proven INtegrated technologies)を採用。環境負荷の大幅な低減を実現し、従来のフェリーよりおよそ35%のCO2排出力削減を実現している。

また、客室は大部屋を廃止してすべて個室とし、船首側にトラックドライバー専用のスペース、中央側に一般客室を設け、窓側はプロムナード通路としている。

この新造フェリーの注目すべき点は、その先進の船体デザインや機関はもちろんだが、その船を2隻とも午前1時に出港し、同日の夜に到着する「深夜便」に就役ささたというところにある。さんふらわあの大洗〜苫小牧航路にはこのほか夕方に出港して翌日の午後に到着する「夕方便」があるが、そちらは一般客を対象としたカジュアルクルーズという立ち位置で、深夜便は貨物輸送に特化したフェリーで、トラックドライバーの休息を重視した設計になっている。

商船三井さんふらわあがその最新鋭のフェリーを深夜便に設定したということは、トラックで行なわれている貨物輸送を、環境負荷の小さい船舶の利用へと転換する「モーダルシフト」に重きを置いていることでもある。貨物をトラックごとフェリーで運ぶことで、トラックの燃料や排出ガスを大きく削減するたけでなく、フェリーの航行時間をドライバーの休息にあてることで、労働時間も大幅に削減し、2024年問題の解決へと導いているというわけだ。また同社では、フェリーの利用により配達遅延やトラックの輸送中事故、災害による長期事業停止といった「リスク」の削減も実現できると提案している。

また日本海のルートを航行する便を運行している「新日本海フェリー」も2025年12月就航予定で小樽〜舞鶴航路のフェリーを新造すると発表。この新造船は現在同航路に就航している「はまなす」「あかしあ」が全長224.8m・総トン数1万6897トン、積載能力はトラック158台・乗用車65台・旅客定員746名であるのに対し、全長199m・総トン数約1万4300トンとダウンサイジング。積載能力はトラック約150台・乗用車約30台・旅客定員286名と、乗用車は約半数、旅客定員は6割と減少するが、トラックの台数はほぼこれまでどおりとすることで、よりトラックの輸送=モーダルシフトに特化したフェリーになるとのことだ。

両社のみならず国内の長距離フェリーとRO-RO船(車輌甲板を持つ貨物船)を運行する船会社は、それぞれモーダルシフトの提案、営業に力を入れている。2024年問題の解決に向け、そのムーブメントはさらに進んでいくことだろう。

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