トレーラーが後輪を浮かせて走行するのはワケがある!

あれ?タイヤが浮ている!

大型トレーラーの横を走っているときに、ふと違和感を覚えて横を見るとタイヤの一部が地面に設置していないと言う場面に遭遇したことはありませんか? これは「リフトアクスル」と言って、大型トレーラーにとっては非常に重要な機能のひとつなんです。

とは言え、すべてのトレーラーにリフトアクスル機能が付いているわけではなく、この機能が付いている装置を持つ大型トレーラーだけが、後輪タイヤを浮かせたり、接地させたりすることができるのです。

この自動でタイヤを浮かせる機能であるリフトアクスルは、トレーラーなどの超大型車が荷物を積んでいない状態、または積み荷が軽いときに限り、自動でタイヤを浮かせることによって、効率の良い走行をするためのものです。ではもう少し詳しく説明しましょう。

そもそもリフトアクスル機能の目的は輸送の効率とコストカットが目的です。大型トレーラーは、荷物をたくさん載せている状態と、何も積載していない状態では、車輌総重量に大きな差が出ます。そして、大型トレーラーに限りませんが、運送車輌は荷物を積載した状態を基準として車輌設計されているため、車軸の数も最大積載量に応じて増えることになります。

ということは荷物がたくさん載っている状態なら問題ないのですが、軽い状態の場合、タイヤ1本当たりの接地圧が小さくなり、走行安定性が悪くなってしまうのです。これを解決するのがタイヤを持ち上げて走ると言う方法です。

そう、荷物が少ない、または無積載の軽いときはリフトアクスルして接地する車軸の数を減らせば、タイヤ1本当たりの接地圧が大きくなり、安定性が増すという仕組みです。

このリフトアクスル機能を動かす動力源は、大型トレーラーに装備しているコンプレッサーです。コンプレッサーに貯められた圧縮空気によって、車軸のサスペンションを自在に上げ下げさせています。ちなみにこの機能はドライバーが任意で操作を行うものではなく、後後軸の重量をセンサーが感知し自動で切り替わるシステムなのです。

先述したように、 リフトアクスル機能のメリットは軽い時の安定性向上が挙げられますが、そのほかにも高速代削減にも役立つのです。これは大型車輌の高速道路の料金区分は車軸によって分かれているからで、3軸の車輌は「大型車」、4軸以上の車輌は「特大車」と分類されます。

この区分けがあることで、例えば4軸の車輌が荷物を積載していない場合、リフトアクスル機能を利用して1軸減らせば、その結果、高速道路の料金区分が「特大車」から「大型車」になるのです。つまり同じ車輌であるにもかかわらず、車軸が減ったことで高速料金をおよそ4割程度安くなると言うから、コストカットの面でも非常に優れている機能と言えます。

ちなみに、高速道路で車軸の数を確認する方法もハイテクで、ETCレーンの路面に車軸を計測するセンサーがあるのですが、その仕組みについてはまた別の機会に説明しましょう。

そして、コストの面では次のようなメリットも生まれます。タイヤが路面に接地していないので、タイヤが摩耗速度を減らすことができる。また、タイヤが浮いているので減速時に使用するブレーキ部品の消耗を抑えられる。さらに、足回り関係の部品への負担が得ることで、ランニングコスト削減にもつながります。

まだまだリフトアクスルのメリットは続きます。接地しているタイヤの本数が少なくなれば、走行抵抗が減少するため燃費向上が見込まれる、走行抵抗が減少するので、車輌の回頭性が良くなり、カーブや交差点が曲がりやすくなるといった効果もあります。

タイヤ一本当たりの接地圧が大きくなるので高速道路で起きやすいハイドロプレーニング現象も起こりにくくするというのもメリットでしょう。

このようにトレーラーを運転する人からすれば利点だらけのリフトアクスル機能ですが、センサーが重量を感知する自動制御システムが作動する条件を故意に変更したり、故障を放置した状態で道路や高速道路を走行するのは不正利用にあたるので、法律違反による罰金・処罰の可能性があります。

最後にリフトアクスル機能のデメリットも紹介しましょう。

まずは導入時お金がかかることですが、これは高速料金やタイヤなどの消耗品コストを考えると一概にデメリットとは言えない部分でもあります。リフトアクスル機能付の車輌は、機能なしの車輌と比較して、約100万円程度の価格差があるので、導入時の費用を回収することは十分可能とも考えられます。

そのほか、センサー部分などはコンピューター制御されており、修理費用が高額になってしまうことや、リフトアクスル機能使用時は摩擦抵抗が少なくなるのでブレーキが効きにくくなるなどがデメリットでしょうか。

いずれにせよ、こうしたデメリットを考慮してもそれ以上の恩恵があるのがリフトアクスル機能だと言えます。

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