
トラックの荷台でポピュラーなのは平ボディ。荷の積み降ろしを後方だけではなく、左右の側方部からできるので効率がよい。加えて、ロープなどで固定すればある程度の高さまで荷を積むことが可能。そして何より単純・簡素な架装なので車輌価格も抑えることができるのだ。
ただ、屋根や高い壁面がないために雨が降れば荷物はずぶ濡れになる。小さな荷物を大量に摘むときも、荷崩れの心配がある。それを防ぐためには、シートをかけるなどしなければならない。すなわち、近年増加傾向にある宅配の段ボールパッケージのような荷物を運ぶのには、あまり向いていないということだ。
これらを、解決した架装が箱バンだ。ワンボックス車のようにしっかりとしたボディが荷物を雨や風、荷崩れなどから守ってくれる。ラストワンマイルの小型トラックに、このタイプが多いのも頷けるだろう。とはいえ、しっかりとしたボディは必然的に荷物の積み降ろしに制限が発生する。特に大型トラックの場合、後部ドアだけしか設置されていなければ大量の荷物の積み降ろしに、どうしても多くの時間が必要になってしてしまう。
なかには側面に扉をつけている車輌もあるが、これも平ボディに比べれば荷物の積み降ろしは大変だ。そこで登場したのがウイングボディである。これは、平ボディの上部に後部扉と、羽のように開く屋根をつけたというイメージの架装。左右のアオリとウイングを開けば、荷台は吹き抜け舞台のようになる。これなら、左右どちらからでもフォークリフトなどで荷物の出し入れができるから、荷物の積み降ろし効率が格段に上昇するわけだ。

初登場は意外と古く、半世紀以上前の1970年。架装メーカーとして有名な日本フルハーフが、パイプフレームと幌を使用したウイングトレーラーを作製した。それから四半世紀ほどをかけ、1993年にはアルミパネルのウイングトレーラーを発売。これが、現在のトラック架装型の原型になったといってよい。
ウイングはサイド全体が大きく開く構造になっており、それを支えているのは前方パネルと後方扉に渡したフレームが中心になる。そのため、当初は剛性などに弱点があったとされるが、現在は技術の進歩で解消されているという。
荷物の出し入れを効率的に行うという着想から開口部を大きくとっているのだが、それは保温性という点からするとマイナス要因の何者でもない。ゆえに、基本的には常温輸送が可能な荷物しか運べないことになる。

ところが、現在では冷凍・冷蔵ウイング車も存在するのだ。ウイング部を含めた壁面に断熱材を入れ、開口部分にはシーリングを施して保温性を高める。冷凍・冷蔵機器は前部壁面上部などに設置し、強力に冷却するというシステムなので、基本的に箱バンのそれと大きな違いはない。もちろん、ウイングを広げて荷物を出し入れすれば冷凍・冷蔵効果はなくなるので、荷物を積んですべての扉を閉めてから再冷却をすることになる。
たいへん利便性が高く、箱バンと同様の運用が可能なウイングボディではあるが、意外なことに海外で使用されている例はほとんどないと言われている。日本の技術力や物流システムの高度さといった環境が、ウイングボディという稀有な存在を生み出したといえるのかもしれない。
