トラック雪降ろしはサバイバル?

雪国のトラックドライバーにとって、積もった雪の雪降ろしはなかなかハードな作業のようです。特に保冷車のように天井材が厚い車はともかく、アルミバンやウイング車だと屋根材の厚みはせいぜい0.8mm程度のため、踏み抜いてしまう可能性も低くはないのです。

また、過去にはトラックの屋根の除雪作業をしていた男性が、脚立から転落してケガをしたことがニュースになったこともあります。その男性はトラック後部にある高さ約90センチのリフトの上に、高さ1メートル80センチの脚立を立て除雪作業をしていたのですが、約2メートルの高さから転落した左足首骨折して救急搬送されています。

トラックは乗用車と違いルーフまでの高さがあり、その作業も自然と高所で行うことになるので、注意して作業しないと事故につながることもあります。

ではなぜトラックに積もった雪は降ろさなければいけないのでしょうか? これは第一に、歩行者を守る意味があります。箱車と呼ばれるトラックの荷台の上に大量の雪を乗せて走っているトラックを見たことはありませんか?

数十センチにもなる雪の塊を乗せたまま走行した場合、カーブに差し掛かった時、遠心力で積もった雪が落下する可能性が高いのです。そして、落下した雪が歩行者やバイクなどを直撃した場合は、立派な道路交通法違反となります。

たかが雪だろうというのは間違いで、雪が凍って氷になったことを考えると、滑り落ちた雪が直撃したときの衝撃がどれほど強いかは想像できると思います。

このことから、荷台から落ちた雪の固まりは、荷物などの落下物と同じ扱いになり、「道路交通法71条4号 積載物の転落・飛散防止措置義務」という違反になり「3カ月以下の懲役もしくは5万円以下の罰金」、「10万円以下の罰金」が科せられてしまうのです。

この積雪と除雪はトラックの形状によっても問題点が変わってきます。ドライバン型(箱型)のトラックなら屋根は開放しないので、雪が積もっても単純に屋根の雪を降ろすことで解決します。

しかしウイング車だとその構造上、屋根の上の積雪は意外なトラブルを引き起こす原因にもなります。少しの雪なら問題ないものの、ある程度の量が屋根に雪が積もってしまうとウイングを開閉する際、中央部分に雪が溜まってしまい開閉が出来なくなるというケースがあります。ウイング車は車体の中央に向かって左右からウイングが持ち上がるため、無理をするとウイングのシリンダー取り付け部分に負荷がかかり過ぎ、破損する可能性があるからです。

さらに、庫内が結露して荷物が濡れるという事態も起こり得るのです。これは、屋根に雪が積もったまま長時間放置すると、ウイングの骨組などの冷えた部分に霜が降りて、日中になって溶け出すことが原因です。

では、安全に屋根の雪を降ろす方法はあるのでしょうか? 先ほど述べたように、不安定なテールゲートの上に脚立を乗せての作業などは、その危険性の高さから問題外と言えます。理想をいえば安全帯が掛けられる装置を設けるのが一番でしょう。しかし、安全帯の設備を基礎から作るにはそれなりの費用が掛かってしまうのです。

そこで、荷台に上がる手段はとして、キャビン横に付いているキャブハシゴが考えられますが、これを使い実際にキャビンの屋根に上がったとしても、そこから荷台の屋根に上がることは至難の技です。これは、もともと現在の箱車は屋根の上の雪降ろしの作業は想定外であり、荷台屋根に上がる為の構造になっていないからです。

こうしたことを考えると最終的にはハシゴを使って屋根に上がる方法が一番確実な方法と言えるかもしれません。もちろん十分な長さのあるハシゴを荷台の屋根のすべりにくい部分に掛け、危険を十分に配慮して作業することが前提です。

このように、温かい時期には必要のない作業ですが、安全性やトラックの破損防止、荷物を守るという事を考えると、雪はドライバーにとって厄介な相手である事は確かです。

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