一般に、ごみ収集車といえばパッカー車を思い浮かべる人が多いだろう。この車輌は、家庭から出たごみを収集するトラックと思われがちだが、それは街中を走る一部に過ぎない。そもそも、ゴミは廃棄物処理法で廃棄物と呼ばれており、それは大きく一般廃棄物と産業廃棄物に分けられる。家庭ごみを収集しているパッカー車は、一般廃棄物を対象とした車輌なのだ。運行主体は地方自治体、あるいは地方自治体に依頼された清掃事業者である。要するに、一般廃棄物の処理責任は地方自治体にあるということだ。
これに対して産業廃棄物は事業活動で生じたもののなかで、廃棄物処理法(産廃法)に定めるものを指している。処理責任は原則的に排出者に帰結するため、ルールに従って適正な処分が求められるのだ。そのなかには産業廃棄物の運搬に関するものもあって、産業廃棄物は許可(産業廃棄物収集運搬業許可)を受けた事業者が、定められた車輌表示をした適正な車輌を用いて運ばなければならないとされている。ただ、自社が排出した産業廃棄物を自社の車輌で社員が運搬する場合は、許可を受ける必要はない。とはいえ、産廃法に従って飛散・流出・悪臭の発生を抑えるといった安全への措置を講じたり、法定の書類を携行したりすることは必須である。
このような厳しい規制があるのは、不法投棄を防止するためだ。産業廃棄物を処分する際にはマニュフェスト伝票を使用して、処理の流れを確認できるようにすることが義務付けられている。産業廃棄物収集運搬車も、その書類を携帯しなければならない。近年では電子マニュフェストが普及したので、代わりに電子マニフェスト受渡確認票(運搬する産業廃棄物の種類や数量・運搬する産業廃棄物を積載した日・積載した事業場の名称や連絡先・運搬先の事業場の名称や連絡先・その運搬を委託した者の氏名または名称が記載されたもの)を携帯している。
産業廃棄物には、固体・液体など様々な形状のものがある。通常の荷物でも落下・飛散があってはならないが、産業廃棄物はそれ以上に厳重な梱包が必要とされている。専用車輌には、以下のようなものがある。
・ダンプカー
コンクリート片・瓦礫・廃プラスチックなど、主に固形物を輸送する。
・アームロール車
脱着できる様々なタイプの荷台があるので、広い範囲の廃棄物を輸送可能。
・タンクローリー
廃油・汚泥など液状のものを輸送する。
・バキュームカー
タンクローリーと同様の廃棄物が対象だが、それらを吸いこんで搭載する機能を持つ。
・深ダンプ車
チップ車とも呼ばれているように、ウッドチップ(おがくず・木片など)などを運搬する。
・パッカー車
圧縮可能な廃プラスチックなどを対象として運搬。
・コンテナ車
コンテナに合わせて幅広い廃棄物に対応可能で、腐蝕の心配がなければそのまま保管することもできる。
・トラック搭載型クレーン
重量のある廃棄物を搭載・運搬する際に使用されるが、オペレータは吊り上げる重量に合わせて講習の受講や資格取得が必要になる。
これらの車輌に直接、あるいはドラム缶・プラスチックドラム・フレキシブルコンテナ・石油缶・感染廃棄物容器といった専用容器に入れて慎重に運搬する。社会活動をする上で、廃棄物の処理は避けて通ることのできない問題だ。適正な処理を行うべく、専用車輌は日々活躍しているのである。