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現在、我が国ではUDトラックス/三菱ふそうトラック・バス/いすゞ自動車/日野自動車が、国内4大トラックメーカーとして君臨している。しかし、60歳前後の昭和世代なら、いすゞ自動車の117クーペ・ジェミニといった乗用車を懐かしむ人も多いだろう。さらに遡れば、日野自動車も4CV(ルノーからライセンスを受け、部品を一括で輸入して組み立てるノックダウン方式で生産を開始、のちに完全国産化に移行した)やコンテッサを生産・販売していたのだ。
この頃両社が手掛けていた車輌は、デザインが丸みを帯びたユニークなものであった。これは商用車でも同様の傾向がみられ、なかでも注目を浴びていたのが日野自動車のコンマースである。1960年に発売された同車輌のボディタイプにはバンとワゴンがあり、836cc/28psエンジンを搭載していた。最大の特徴は、このエンジンを縦置きにしたFF(フロントエンジン・前輪駆動)方式を採用していたことだ。
トラックは、基本的にFR(フロントエンジン・後輪駆動)方式をとる。その理由は、トラックが後部荷室(荷台)に荷物を載せるという特色があるからだ。要するに、多くの荷物を載せればそこには大きな荷重がかかる。FFの場合、前輪が駆動するので後ろが重くなれば駆動力を得にくくなるのだ。逆にFRであれば、荷物を載せれば後輪に荷重がかかるので、駆動力が得やすくなる。また、小回りが利きやすいことや雪道に強いこともメリットといえよう。
ただ、FRは後輪付近に様々な部品などが増えるため、荷室(荷台)の地上高が高くなる。必然的に、積載量が減少するというデメリットがあるのだ。ゆえに、積載効率を考えればFFの方が優れているといえる。コンマースは商用車のみならず乗用車もFRが主流であった時代に対抗し、FFを採用することでその特徴付けを行ったのである。
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しかし、現在では当たり前になっているドライブシャフトの角度に変化があっても、均一な回転数を維持する等速ジョイントなどの技術が採用されているわけではなく、信頼性や耐久性に問題を抱えていた。とくに、積載量の割にエンジン出力が足りないことは致命的で、のちに排気量を増やすなどして対策を施したが抜本的な解決には至らずに、発売から2年余りで生産終了となっている。
ところが、同社の小・中型トラックの代表格ともいえるデュトロの、最新車輌でFFが復活を遂げたのである。それが、小型BEV(バッテリ式電気自動車)トラックであるデュトロZ EVだ。コンマースは先述のような問題を抱えていたものの、低床と乗り心地の良さというメリットは高い評価を受けていた。これがヤマト運輸のニーズと合致したこともあって、FFトラックの再登場となったわけだ。
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同社では、この車輌が登場する以前からコンセプトモデルとして、キャブオーバー型FF方式のEV試作車「eZ-CARGO」を開発している。’13年の東京モーターショーに出品されたときには大いに話題を呼んだものだ。車輌の技術は、日進月歩。試行錯誤を繰り返しながら、新しい技術に繋がっていくのである。
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