EV化が進むトラック・バス、その歴史は意外と旧い

世界的に見ると少し沈静化してきた感はあるものの、日本では小型トラックやバスのEV化が進みつつある。車輌を運行する段階では、CO2など環境に悪いといわれる物質の排出がほとんどないことや、エネルギー還元率の高さから未来を担う車輌と期待されているのだ。確かに、ジェットエンジンやロケットエンジンといった特殊な推進力を除けば、電気エネルギーはほぼすべての動力として利用できると考えてよい。

EV化の動きだけを見ていれば比較的新しい技術のように思われがちだが、実はけっこう古くから実用化されている。わが国でも、1923年にはすでにEVトラックが登場していたのだ。これは、「タウンスター運搬車」と呼ばれていたもので、法律上は今でいう電動自転車のような位置づけであったといわれる。とはいえ、全長約2m50㎝・全幅約1m20㎝・全高1m・車輌重量300㎏で、187.5㎏の積載重量があったというから、十分立派なトラックであったといっても過言ではない。

バスはこれより少し遅れた1930年に、名古屋市内で登場したそうだ。公共交通の乗り合いバスで、16人ほどの客を乗せて試験走行をしていたという。その後、乗客人数を19人~40人に拡大して本格運用を開始。走行速度は42㎞/h~62㎞/hと実用に耐え得るレベルであった。

ただ、これらが開発された理由は現在のような技術の進化や、環境問題への対応といったものではない。そのころ、わが国の化石燃料の供給事情が極めて悪く、代替エネルギーが必要になったという背景があったのだ。ゆえに、新たな技術というよりは既存の技術を利用し、何とか実用化しようと工夫を重ねた賜物であったといえる。その証拠に、高度成長期がきて化石燃料の供給が安定したころには、EVトラックやバスの姿を街中で見かけることはなくなってしまった。

とはいえ、1970年の大阪万博ではEV自動車が最先端技術として紹介され、高度成長期の弊害ともいえる環境破壊対策としても、EV化は進めなければならない技術だと位置づけられていた。それを後押ししたのが、世界的な地球温暖化問題に対する意識の高まりと、高性能なリチウムイオン電池の開発であったといえよう。

現状、トラック・バスのEV化のネックになっているのは、

・1充電で走れる走行距離の短さ

・バッテリーの重さ

・車輌単価の高さ

・充電時間の長さ

・充電インフラの未整備

などである。これは、車重が重い・多くの人や荷物を運ぶ・長距離を走る・コストに厳しいといった、大型・中型トラックや観光バスにとっては致命的な問題となる。

そこで、現状でも幾分EV化のしやすいラストワンマイルの小型トラックや路線バスが、ひと足先に実用化に踏み出しているわけだ。

2024年5月に横浜パシフィコで開催された「人とクルマのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」では、「東京R&D」が開発を進めるEVバスが来場者の話題をさらった。また、北九州市の「EVモーターズ・ジャパン」や中国の「BYD」などの車輌を、公共交通事業者が積極的に導入し始めている。

小型トラックは国内トラックメーカーが次々とEVを投入し、大手運送事業者を中心に導入数が増えているようだ。また、ファブレス(工場を持たないメーカー)方式のベンチャー企業なども、EVトラックの製造・販売に乗り出している。トラック・バスのEVはまだ緒に就いたばかりかもしれないが、今後の展開が楽しみだといえよう。

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