トラック・バスにも導入が進む先進運転支援システム

自動車は便利な乗り物だが、操作を誤るなどすると事故につながる。交通事故件数や交通事故死亡者は、長く減少傾向にあるとはいうものの決してゼロというわけではない。どんなに気を付けていても、避けられない事故が発生することもあるのだ。これを防ぐのはドライバーのモラル・技術の向上に加えて、交通ルール・道路環境の整備などといったことが大切だといわれている。同様に、車輌側のハード面における様々な先進技術の開発・導入も、重要な要素であることは間違いない。

この技術を、総じて「先進運転支援システム(Advanced driver-assistance systems、略称:ADAS)と呼んでいる。近年は、その到達点ともいえる自動運転技術ばかりが注目されているようだが、実は2010年ごろから様々なADASが実用化されているのだ。なかでも高い効果が実証されている衝突被害軽減ブレーキは、2011年に大型トラックへの搭載が義務化され、翌年にはバスにも同様の措置が取られた。このシステムは、衝突の危険が迫ったときにドライバーに対して警告を発するだけではなく、自動的に車輌を減速・停止することができるものだ。

2014年に大型車輌を対象に義務化された車線逸脱警告システムは、ドライバーが方向指示器を使用せずに車線を越えたり跨いだりした場合、警告を発するもの。これまで、車線の逸脱が確認された際にそれを自動的に修正することは、車重のある大型車輌では難しいとされていたが、今では電動パワーステアリングを採用することで可能になっているのだ。

近年、積極的に導入されているのはドライバーモニタリングシステムである。これは、カメラと赤外線でドライバーを捉え、その状態を確認するといった仕組みになっている。ドライバーの視線をチェックして分析し、脇見やながら運転を防止する効果が期待できるのだ。なかにはドライバーの表情に加えて、走行速度・走行ライン・ステアリングの状態・方向指示器の使用状況などを分析し、居眠り運転を検知する機能を持つといった装置もある。

バスの場合は、ドライバーが急病などで運転不能に陥ったときに、ドライバーや乗客が作動させることができる「ドライバー異常対応システム」を搭載しているものが増えてきた。緊急事態が発生したときにこの装置を作動させることで、ハザードやホーンを使って外部に警告を発しながら、自動的に車輌を停止させて緊急通報まで行ってくれる。乗客の安全を考えた、バスならではの装置といえるだろう。

このように、ADASはすでに様々な装置が開発・実用化されている。これらは、

・異常などに対して警報や警告をする

・衝突被害の軽減

・運転の支援

・視覚や運転環境モニタリング

などというように分類することができるのだ。

国土交通省では、これらのシステムが普及するように注力している。たとえば、ADASの開発に関わる民間事業者などに補助金を出したり、事業者・研究者間の技術連携を橋渡ししたりして、ADASの開発を促進しているわけだ。こうして実用化に漕ぎつけたシステムを、トラック・バスメーカーが新たな車輌に積極的に搭載することで、安心・安全な車輌がますます市場に増えてくることを期待できるのである。

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