
イタリアのミラノで、2024年5月8日~11日に開催された「TRANSPOTEC LOGITEC 2024」。欧州で活躍するトラックが集まり、メーカー各社の最先端技術を体感できることもあって、世界各地から来場した大勢の人で賑わっていた。今回の展示内容でとくに注目をされたのは、カーボンニュートラルのための技術である。
周知のとおり、欧州はカーボンニュートラルに熱心だ。これは、地球温暖化などによる環境破壊を憂いてのこと。たとえばオランダの場合、国土の1/4が海面より低い位置にあるために、地球温暖化で極地の氷が溶けるなどして海面上昇が進めば、国家存亡の危機に見舞われかねないのである。そこで、世界でもトップクラスに厳しいとされる排気ガス規制「ユーロ7」を、欧州委員会で検討するなどしているわけだ。
同様の理由からEV化にも意欲的で、一時期は2030年にEV保有率を、50%~100%程度に引き上げたいなどといった目標を持っていたほどだ。現在は少し現実的な目標にシフトしているものの、カーボンニュートラルには依然真剣に取り組んでいる。しかし、大型トラックは化石燃料に代わる技術の開発が、なかなか思うように進んでいない。そのようななかで、本展示会では欧州トラックメーカー各社の最新技術が披露されたのだから、世界中の耳目が集まったのも自然なことだといえよう。

まず、メルセデスベンツグループのダイムラートラックは、最新型のeアクトロス600を登場させた。1回の充電で600㎞走れる次世代のEV大型トラックとして、実用レベルにあることを来場者に強く印象付けた。ルノートラックスからも、EV大型トラックが展示されている。以前から環境問題に注力する、ボルボグループ傘下に入ったこともあるのだろうが、拠点となるパリなどでは騒音規制も厳しく、電動車輌しか走行できない時間帯があるなどといったことも背景にあるようだ。

イヴェコは、すでに圧縮天然ガス(CNG)トラックを実用化。これは化石燃料内燃機関なのでCO2などを排出しないわけではないが、ガソリンやディーゼルに比べると極めて少量に抑えられるので、環境に優しい動力とされている。今回の展示会では、EVだけではなくCNG車もラインナップしていた。

ホルトハウゼン社からはCNGとバイオメタノールが使用可能な、マルチフューエルトラックが出展されている。同社は、米ヘヴィメタバンド「メタリカ」のワールドツアーで、欧州内の移動にLNG(液化天然ガス)・バイオディーゼル・バッテリーEVのトラックを用い、輸送サポートにあたっていた縁から、展示車輌にそのイメージカラーリングを施している。


ほかにも、スカニアはEVやCNGエンジンのトラックを展示。マンがアピールしていたEVトラックの試作車輌は、1回の充電で600㎞~800㎞の走行が可能だという。また、ダフの既成トラックをベースにして、燃料電池とバッテリーユニットを搭載した車輌を出展した、トラックメーカーではない企業もあった。



これらの車輌のなかには会場内で試乗が可能なものもあり、最新技術を来場者が体験できた。EVなどの新たな技術で作られた車輌は、ディーゼル車とは運転感覚が大きく違う点も多いので、試乗をすることでユーザーの理解を深めることができるといえる。トラックの試乗は安全性や場所の問題がネックになりがちだが、新たな技術は体験することで普及促進に弾みがつくので、本展示会の試乗体験は貴重なプログラムであったといえるのではないだろうか。