
国境を股にかけて走るヨーロッパの最新トラックは安全機能も先を行っている……。アクトロスなどメルセデスベンツのトラックを開発・製造する「ダイムラー・トラック」は、新しい安全システム「コネクテッド・トラフィック・ワーニング」を発表した。この機能は自車周辺の事故や工事、逆走車や大雨、霧、滑りやすい道路などさまざまな種類の危険を警告するほか、そのキャッチした情報を周辺のほかの車輌にもインフォメーションするという画期的な機能を持っている。

「コネクテッド機能」(またはコネクテッドサービス)とは、クルマがインターネットなどの通信とに接続して、交通情報や危険情報の共有などさまざまなサービスを利用できる機能のこと。すでに乗用車の分野では、トヨタの「T-Connect」や日産の「Nissan Connect」、ダイムラーの「COMANDシステム」「Mercedes me connect」などが実用化。さらに欧州では2018年4月がら「eコール」と呼ばれるサービスをすべての新車に搭載することが義務付けられている。
トラックが走行中に利用するコネクテッド機能の実用化はダイムラーが初めて。2025年3月に同社が発表した「コネクテッド・トラフィック・ワーニング」では、先に述べたとおり自車周辺の情報をキャッチするだけでなく、走行中の自車が検出した危険情報を発信し、周囲の車輌や道路全体の安全性を向上させることができるのだ。
ダイムラー・トラックでコネクティビティアプリケーションの開発を担当するエンジニア、ステファン・エンゲレン氏が、このコネクテッド・トラフィック・ワーニング」の機能に関して答えてくれた。

Q1:コネクテッド・トラフィック・ワーニングとは?
コテくテッド・トラフィック・ワーニングはメルセデスベンツの新型トラックで利用できる機能です。クラウドまたはアウトバーンGmbHなどのインフラオペレーターを介して接続された車輌が、走行ルート状にある危険な状況について交互に警告し合うことができます。これにより、コーナーの先や霧のなかなどドライバーの視界には見えない危険の要素を、事前にキャッチすることができるようになります。
Q2:コネクテッド・トラフィック・ワーニングはどのように機能しますか?
このシステムは、社内の内部信号にもとづいて事故などの危険な状況を自動的に検出し、コネクテッド機能を通じてクラウドに送信されます。これにより、付近を走行しているすべての車輌にメッセージとして配信され、これらの情報をキャッチすることができます。車内では危険警告がナビゲーションのマップ上に表示され、その危険が走行しているルート上にある場合は、メーターパネルに警告メッセージと音声メッセージがドライバーに送られます。また、ほかの車輌メーカーやインフラ事業者、道路会社などサードパーティーのメッセージも追加することが可能になっています。
Q3:システムを利用するための要件は?
コネクテッド・トラフィック・ワーニングを利用するには、ナビゲーションサービスを装備する新しいマルチメディア・コクピット・インタラクティブ2を搭載したアクトロスと、有効な契約が必要です。危険警告は携帯電話接続を使用したメルセデスベンツのテレマティクスプラットフォームを介して、送受信されます。
Q4:このシステムが警告する危険な状況とは?
現在、当社のシステムは以下の危険な状況を警告できます。
・事故
・故障車
・道路工事
・危険箇所
・緊急ブレーキの作動
・逆走車(自車/他車)
・大雨
・霧
・滑りやすい道路
Q5:このシステムはどのようにして事故を防止したり、事故の影響を軽減したりできますか?
当システムは、例えば坂道を登り切ったりコーナーを曲がり切ったときにドライバーが気づかない危険な状況をキャッチし、警告することができます。これにより、ドライバーはそれらの状況に早く適応し、より安全かつ経済的に運転することができます。
Q6:製品開発には誰が関わりましたか?
わたしたちは、事前開発と車輌開発からなるグローバルチームを組み、このシステムを開発しました。
Q7:コテくテッド・トラフィック・ワーニングはほかのメーカーのクルマでも機能しますか?
このシステムはオープンであり、ほかの自動車メーカーとも互換性があります。高速道路でもアウトバーンGmbHなどのインフラ事業者とのリンクができます。
Q8:競合他社にもこのようなシステムはありますか?
わたしたちの知る限り、このようなシステムを開発・提供しているトラックメーカーは当社が初めてです。同様のシステムはすでに乗用車には普及し始めていますが、それらとも情報共有ができるようになっています。
Q9:このシステムは将来どのような可能性を切り開くことができますか?
道路上の危険な箇所に関する情報をスピーディにドライバーに警告することにより、事故のない運転を実現する多くの機会が生まれます。それにより、ドライバーとクルマを危険に対して適切に対応させることができ、事故や急ブレーキなどを回避することができます。
Q10:このシステムにかかる費用は?
コネクテッド・トラフィック・ワーニングのサービス費用は、車輌に搭載されるナビゲーションの価格に3年分含まれています。その後は毎年延長できるオプションを利用することになります。

メルセデスベンツのトラックは現在、日本では正規輸入は行なっておらず、ダイムラートラックの日本市場は三菱ふそうがそれを担っている。同社では「トラックコネクト」というトラックの稼働状況をインターネット経由でチェックできるシステムを開発・リリースしているが、運行管理者や配車係など運送会社にて車輌を管理する担当者を対象にしたもの。ドライバー向けのコネクテッドシステムとして、同じダイムラーグループであるメルセデスベンツが開発したコネクテッド・トラフィック・ワーニングのふそう車への導入についても期待したいところだ。
