トラックのEV化事情

自動車のEV化が叫ばれるようになって久しいが、我が国においてその普及率は必ずしも高くない(日本自動車販売協会連合会によると、2023年の販売シェアは1.66%)。特にトラックに関しては、小型タイプのEVが市販化されてやっとその緒に就いたところである。大型・中型トラックの実用化に至っては、まだ越えなければならない壁が多いようだ。

EVが注目されたきっかけは、地球温暖化などの環境問題にあるといっていい。化石燃料の内燃機関は、温室効果ガスなど有害排出物が多いとされる。なかでも、トラックの動力として重宝されているディーゼルエンジンは、1999年に当時の東京都知事がこれらの問題点を指摘し、厳しい規制に乗り出したことで一気にイメージが悪化した。

もちろん、EVも全てに万能というわけではない。エネルギーとなる電気を得るためには発電をしなければならないが、その方法によっては温室効果ガスや有害物質が、相当量排出される場合もあるという。とはいえ、現段階において考えうるエネルギーとしては最も有望なものであり、将来的に多くの動力が電化する可能性は高いとされている。

Screenshot

ただ、現段階ではトラックのEV化にはデメリットが少なくない。最大の問題は、1回の充電で走れる距離が短いことだ。EVトラックのバッテリーは、基本的に不要となった燃料タンクの代わりに設置するといったレイアウトになる。この場合、トラックの大きさや積載量にもよるが、ディーゼル車が燃料満タンで走行できる距離には及ばないといわれている。さらに、充電スポットが少ないことや充電に時間が取られることも、大型・中型の中・長距離トラックには不利な要素といえるのだ。

これらを解決するためには、バッテリーを増やすことが考えられよう。しかし、リチウムイオンバッテリーは重量があるために、搭載するバッテリーを増やせば車輌重量が増す。その分、最大積載量が減るために積載効率が悪くなる。さらに、バッテリーによって場所が取られれば、その分積載容量も低下する。荷物を運ぶトラックにとって、これらは致命的な欠点になるわけだ。

とはいえ、トラックのEV化はメリットも大きい。その最たるものは、電動モーターのエネルギー変換率の高さであろう。ディーゼルエンジンの場合、発生するエネルギーの4割程度しか動力に転換できず、残りは熱や摩擦として廃棄されているのだ。これに対して、電気モーターは9割が動力に利用できる。大きなトルクを生み出せるので、重い荷物を運ぶトラックには適した動力といえるのだ。

また、

・静寂性が高い

・停車時でもバッテリーからエアコンやヒーターなどの動力を得られる

・走行時にCO2・NOx.SOx・PMなどの有害物質を排出しない

・災害時の電源として使用可能

・アクセルペダルだけでも発進・加速・減速・停止といった操作が可能なるので、運転操作の簡便化が図れる

といったことも、ディーゼル機関より優れた点として挙げられる。

閉鎖された広大な建設現場で活躍する大型車輌「重ダンプトラック」は、限られた走行範囲であることから自動化やEV化が進められており、シリーズハイブリッドタイプのEVトラックが実用段階にあるという。すなわち、トラックがEV化するための技術的な問題は、ほぼクリアしていると考えてよいのだ。公道を走る大型・中型トラックが後に続くために、小型軽量で高効率なバッテリーの開発と、充電インフラの拡充が待たれるところである。

ページトップに戻る