
自動車の運転は、よくその人の本性が出るなどといわれる。確かに、ハンドルを握ると性格が一変するといった人も少なくないのかもしれない。
これには様々な心理的原因が考えられるが、大きな要因として挙げられるのは、緊張感による余裕の喪失なのではないだろうか。自動車の運転は、ひとつ間違えれば人の命にかかわる大事に発展する。なかには、ドライブを趣味としてストレスの発散をする人もいようが、たいていの場合はプレッシャーになっていることの方が多いだろう。
そのような緊張感のなかでハンドルを握っていれば、予測に反した(ルールに反した)動きをする車輌には寛大になれないものだ。たとえば、高齢者マークや初心者マークを付けたクルマが、ふらふらと割り込んできてブレーキを踏まなくてはならなくなったら、「へたくそは端によって大人しく走っていろ!」などと思ってしまうかもしれない。時間に追われていれば、なおさらのことだ。
一般に、トラックは業務のために走行している。多くの場合、集荷・納品時間が指定されていることに加えて、燃費・安全・車体(運転)特性・決められた休息などを考慮し、綿密なスケジュールを立てて運行しているのだ。このように、トラックは乗用車に比べて多くの制限を受けながら走行しているのだが、このことは乗用車ドライバーにあまり理解されていない。
トラックドライバーが頭を悩ます乗用車ドライバーの運転には、大きく分けて3つのパターンがあるという。ひとつ目は、信号や交差点の停止位置だ。トラックは車体が大きい。ゆえに、内輪差も大きくなる。右左折の際には、どうしても大きく回り込むように曲がる必要があるのだ。
路線バスが通る細い道の交差点には、停止線が異様に後ろに下げられている場合がある。これは、バスが曲がる際に対向車線を使用して大きく回ってくるためである。このように、日常的に大型車輌が通行するところであれば、乗用車も停止位置には気を付けるだろう。しかし、通常の交差点では大きく停止線を越えて停まる乗用車がある。それでは大型車が曲がれず、交通渋滞や事故を引き起こす可能性が高まってしまうのだ。
ふたつ目は、急な割り込みである。トラックは車輌の重さに加えて、多くの荷物を載せている。さらに、荷崩れを起こさないようにしなければならず、ブレーキをかけるときは細心の注意が必要なのだ。にもかかわらず、直前に不用意な割り込みがあれば急ブレーキをかけなければならなくなる。これは、たいへん危険なことだといえよう。

3つ目は、登り坂で速度が低下する現象だ。これは意図的というよりも、渋滞原因にもなっているようにドライバーの不注意によるものである。いうまでもないが、登り坂で平坦な道と同じ程度にアクセルを踏んでいたのでは、徐々に速度が低下する。そういった乗用車の後ろにいるトラックは、落ちた速度に合わせなければならなくなるのだ。
乗用車は再びアクセルを踏み込むと速度を上げることは可能だが、重いトラックはそういうわけにはいかない。一度落ちた速度を戻すには相当の時間がかかり、燃料のロスも大きくなる。このように、トラックは乗用車とは似て非なるところが多い。それを理解せずに、自分勝手な運転をする乗用車ドライバーとの共存は、トラックドライバーにとって解決の難しい頭が痛くなる問題なのである。
