
EVは化石燃料動力の代替機関として開発が始まったが、リチウムイオン電池の登場と地球温暖化対策として、2000年代に入ってから世界的に注目度が高まり、開発速度が急激に加速した。技術の進歩とともにEVはシェアを伸ばしつつあるものの、バスやトラックといった大型車輌は、
・1充電当たりの航続距離が短い
・充電施設のインフラが十分ではない
・バッテリー重量が重い
などの課題に決定的な解決策が見いだせず、実用化があまり進んでいない。
そのようななかで、路線バス・コミュニティバスというような、
・運行地域が限定されている
・1回当たりの走行距離が短い
・営業所などに充電設備を設置できる
などの条件を持つ事業で実証実験が重ねられ、実用化に道筋がつきつつある。
そういったEVバスを提供しているベンチャー企業の1社が、福岡県北九州市に本拠を置く「EVモータース・ジャパン」だ。この会社は、2019年4月に設立された若い会社である。
中心となる事業はバスを初めとするEV製造だが、自社で工場を所有しないファブレス企業として創業した。現在は車輌を企画・開発して中国の事業者に製造を依頼しているが、2023年末に北九州市に組み立て工場が完成したので、2025年度内にはそこで生産を開始するとしている。現在ラインナップされているEVバスは、マイクロバス・コミュニティバス・小型乗合バス・路線バス・観光バスなどで、それぞれ1回の充電で250㎞~293㎞走行する性能を持っている。


すでに、沖縄県の那覇バス・長野県の駒ケ根市(コミュニティバス)・愛媛県の伊予鉄バス(観光バス・路線バス)・広島県のフォーブル(コミュニティバス)などに導入実績を持っており、今後はさらにシェアを伸ばしていくとしている。
2024年5月にパシフィコ横浜開催された「ジャパントラックショー2024」では、同社が出展した「e物流車」が来場者の耳目を集めた。小型乗合バスと同型の車輌後部を荷室にした、1~2トンの荷物を積載できるカーゴ車である。さらに、これよりひと回り大きい3.5トン積みのカーゴ車もプロトタイプが完成している。この車輌には、冷凍車タイプも用意されているそうだ。さらに、今後は小型トラックタイプやトラクタの開発も予定されているという。
このほかにも、3輪スクータータイプの「eトライク」が2種ラインナップされている。この車輌は一般的な街乗り電動スクーターではなく、ラストワンマイルを意識して設計されたものだ。1回の充電で100~120㎞走行可能という性能は、物流車として十分満足できるのではないだろうか。

荷物も100㎏程度は積載可能だから、小口配送には最適な車輌といえよう。また、現在各地で実証実験が行われているグリーンスローモビリティ向け車輌も、私道走行用の4人乗りと6人乗りの2種類が用意されている。

今後、すべての車輌がすぐにEV化するということは考えられない。とくにバスや大型トラックは、クリアするべき課題が多数残っているのが現実だ。しかし、同社のようなベンチャー企業が、新たなEVの開発に飽くなき挑戦を続けることで、我が国のEV技術が大きな進化を遂げることは間違いないだろう。