
2024年問題(働き方改革関連法の物流業界への本格適用によって生じる問題)がクローズアップされるにともない、明るみになってきたトラックドライバーの長時間労働や長時間の荷待ち、付帯業務(積み込み・荷下ろしやそれに付帯する雑務)の強制などといった過酷な労働環境。これは、1990年に施行された「物流二法」(「貨物自動車運送事業法」と「貨物運送取扱事業法」)によるトラック事業の規制緩和(1990年問題)により、運送業者と荷主との力関係に大きな歪みが生じたことが影響している。
そういった業者間の不適切な取引によって発生するドライバーの不当な労働状況を改善するため、国土交通省では2023年7月に荷主や元請け事業者を監視する162人の「トラックGメン」を全国の地方運輸局や運輸支局などに配置。さらに’24年8月にトラックGメンとは別に「適正化事業調査員」(通称:Gメン調査員)を設置し、11月にトラックGメンを「トラック・物流Gメン」へと改組・拡充。現在では199名のトラック・物流Gメンと166名のGメン調査員、総勢357名の体制で監視が強化されている。
トラック・物流Gメンは荷主や元請け事業者による運送業者への不当な取引の情報収集をし、その結果法定違反の疑いがある荷主や元請け事業者に対し、それを是正させる「働きかけ」を行なう。そのうち法令違反の原因として疑うことに相当の理由がある業者に対しては「要請」をして、その要請をしても改善されない業者には「勧告」を行ない、該当する業者の社名とその不当な取引の事案を公表する、という取り締まりを行なっている。また、これらの監視と執行は、厚生労働省など各行政機関とも連携して活動している。

2025年1月30日、その不当な取引をしていた業者に、最も重い「勧告」を行なう方針を固めたと国土交通省から発表された。その業者は日本通運の親会社NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)とパナソニック・ホールディングスが共同出資する「NX・NPロジスティクス」など2社。誰でもその社名を知る大手物流企業に是正の勧告が行なわれるのだ。
その勧告の理由はいずれも、下請けのトラック事業者に対して長時間の荷待ちを強いた、ということ。日本の物流業界を代表するトップ企業がこのような不当な労働を下請けに強いていたということは非常に由々しき事態。2024年問題の解決に向けた対策・改善を怠っていると断じざるを得ない。
これに対しNXHDは「勧告を真摯に受け止め、荷待ち・荷役時間の改善に向けた具体的な取り組みを進め、信頼回復に努める」とコメントした。
国土交通省では2024年11月・12月の間に「集中監視月間」として、違反につながる行為の是正の「要請」を7軒実施。「働きかけ」は423件にのぼった。「働き方改革関連法」の物流業界の本格適用の開始(2024年4月1日)からもうすぐ1年。トラック・物流Gメンのさらなる取り締まり強化と物流業界全体のドライバーの労働環境改善への意識改革が、今後も強く求められる。
