減トン不要、法令クリアのカスタムトラクタ

映画『トラック野郎』以前の1960年代から脈々と続いているトラックを自分好みにカスタマイズするカルチャー。海外からも「DECO-TORA」として注目されている日本のデコトラはもとより、ヨーロッパやアメリカ、アジアなどさまざまなお国柄に合ったトラック造りが進められている。特にタイなど東南アジアでは日本のデコトラをリスペクトしたカスタムが人気だ。

日本では旧来のデコトラ(アートアップ)はもちろんのこと、近年ではヨーロッパのテイストを取り入れた「ユーロアート」も人気。近年問題になっているドライバーの人手不足を解消する手段として、若手の新人のためにトラックをカスタマイズする運送会社も増えている。

そんなトラックを造る工房や架装業者のなかにも「コンプライアンス」を遵守するという意識が定着し始めている。2024年11月27日に開催された「ジャパントラックショーin Fujispeedway2024」の会場にて三重県の「三基」と「三重ウラノスボディー」が展示していたいすゞファイブスターギガをベースにしたカスタムトラクタもその代表的な一例だった。

従来のトラックのアートアップでは、重いステンレスや鉄メッキのバンパーなどといったパーツを装着することで、車輌総重量が増えることにより最大積載量を減らす(減トンする)必要が出てくるケースが多々あった。そういった問題を解決するために両社が編み出した合法カスタマイズが「フルカスタムトラクタ」という手法だ。

トレーラーをけん引するトラクタの場合は、その車体の総重量にともない、そのけん引の要となる「第5輪荷重」が決められる。その重量を法令どおりに確保するため、「フルカスタムトラクタ」はノーマルのトラクタの純正架装(踊り場、サイドバンパー、フェンダーなど)を取り外してメーカー出荷時のフレーム状態に戻し、そこから実車の重量計測をして架装可能重量を割り出す(=装着可能なパーツ重量を割り出す)。そしてその現車に合わせて根太組みから架装を施工。フル架装状態にして再度重量計測をして、規定どおりの重量におさまった状態で最終仕上げを行なう、という工程で、法令遵守による第5輪荷重を確保したフルカスタムトラクタを完成させているという。

架装のポイントは

・オーナーのオーダーによるワンオフ製作。

・架装可能重量の厳格な割り出し(台貫による実測)。

 トラクタの総重量-(車輌重量+55kg✗2人)-第5輪荷重

・適材適所によるマテリアル(素材)選びにより架装重量を管理、そして防錆処理。

・防錆素材の使用および工作後のメッキ処理。

 バックキャブ工具箱、サイドエアロバンパーなどの組み立て後の亜鉛メッキ処理。

これらの工程により、スタイリッシュでかつコンプライアンスも遵守した、車検クリアの公認カスタムトラクタを造り上げているのだ。

2024年問題によりドライバーの人手不足が深刻化している昨今、純正パーツとカスタムパーツとの交換により、効率的に造り上げられた法令クリアの「ホワイトな」カスタムトラックは、若手ドライバーのリクルートという意味合いでもさらに需要が増してゆくに違いない。

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