箱バンなどの後方に設置されているテールゲートリフター。荷台から重い荷物を降ろすのに便利な装置だ。
スーパーやコンビニに配送するトラックは、荷物をかご車やドーリー、台車などに積んでいることが多い。プラットホームのあるところであれば、スムーズに積み降ろしができるが、駐車場などの地面に降ろすときなどは、これがなければ手積み手降ろしを強いられることになる。
操作は主にドライバーが行なっているが、傍で見ているとスイッチを操作するだけの簡単な作業に見える。しかし、意外と事故が多発しているのだ。最も多いのが、転落である。テールゲートは荷台に上げた状態でも高さは1m程度なので、いざというときには十分飛び降りられると思われがちだ。しかし、実際はかご車やドーリー、台車などに積んだ重い荷物を運んでいるので、背中などから転落することが少なくない。そこに、荷物が落下すれば大事故になることは避けようがないのだ。ほかにも、ゲートロックにドライバーが挟まれるなどといった事故もある。
そこで、労働安全衛生規則が改正されて2024年2月から、テールゲートリフターによる荷役作業に従事する者を対象に、「特別教育」が義務化されたのだ。
この規則は労働安全衛生法に基づく厚生労働省の省令で、労働の安全衛生についての基準を定めており、法律と同様の効力を持っている。
この規則自体は、従わなかったことに関して罰則を規定していない。しかし、事業者が作業者に「特別講習」を受けさせず、テールゲートリフターを操作させた場合は、安全衛生法違反に問われて「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられる。
また、特別教育の記録を保存しなかった場合も、「50万円以下の罰金」になるからいい加減な対応は許されない。
特別講習の内容は、
*学科教育
①テールゲートリフターに関する知識(1.5時間)。
・テールゲートリフターの種類・構造・取り扱い方法。
- テールゲートリフターの点検・整備の方法。
②テールゲートリフターによる作業に関する知識(2時間)。
・荷物の種類と取り扱い方法。
・台車の種類・構造・取り扱い方法
・保護具の着用。
- 災害防止について。
③関係法令の科目に係る学科教育(0.5時間)。
・労働安全衛生法の関係条項について。
*実技教育
①テールゲートリフターの操作の科目に係る実技教育(2時間)。
である。
特別講習は原則的に社内で行うことになっているが、講師をとなる人材を確保できない場合などは、外部機関の講習会場で受けることになる。
学科教育はオンライン講習でも可能だが、その場合は実技教育を別途受けなければならない。こういった講習を受けることで作業者の意識が高まり、正しい手順でテールゲートリフターを操作すれば、事故は確実に減少することになるのだ。
多くの場合、時間に追われて手順がおろそかになってしまい、事故につながるというパターンが多いといわれている。「2024年問題」で人手不足のなか、物流業界全体が効率重視の風潮にあるが、こういった講習を通じて「安全第一」の徹底が、改めて求められているのではないだろうか。