2024年問題で再認識されているトラックドライバーの指導指針

「2024年問題」といえば、「トラックドライバーが不足する」という課題に突き当たる。これは、2024年4月にトラックドライバーに対する労働時間などの改善基準告示が、改正されたことに端を発している。その主な内容は、

・1年間の拘束時間

3516時間→原則3300時間(最大3400時間)・

・1ヶ月の拘束時間

293時間(最大320時間)→原則284時間(最大310時間)。

・1日の休息時間

継続8時間→継続11時間を基本とし、継続9時間。

となったのである。本来であればトラックドライバーの労働条件が改善されたわけだから「2024年問題」などといって頭を悩ませる必要はないはずだ。しかし、扱い荷物が増加するなかでトラックドライバーの人数が増えなければ、労働時間が短くなった分だけ人手不足が起きるのは自明の理である。結果的にそのしわ寄せが現場に回れば、トラックドライバーのモチベーション低下にもつながりかねない。

そこで、国土交通省では従来からある「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」を、この基準告示に合わせて改正した。表題のとおり、このマニュアルは運送事業者が主体となって、傘下のトラックドライバーを指導・監督するためのもの。その内容は細かく12項目に分かれるが、それをわかりやすく7項目にまとめた概要版が出されている。

①国民生活を支える職業に従事する者として、関係法令を遵守させる

プロ意識と誇りを持ち、安全・確実・迅速な輸送をするという役割・使命を自覚させ、貨物自動車運送事業法・道路運送車両法・道路交通法などの関係法令を遵守させる。

②車輌の特性を把握させ、運転上の注意点を理解させる

トラックの高さ・長さ・幅は、死角・内輪差・操縦性などに影響するので、運転者にはそれぞれの車輌特性に合わせた運転をさせる。特に、トレーラーや液体貨物を積載するトラックは注意が必要で、どのような事故の可能性があるかを具体的に示すことが大切。

③適切な貨物の積載方法や積載重量を理解させる

積み付けが偏っていたり固縛が十分でなかったりすると、荷崩れや横転の可能性が高まるのでその危険性を認識して防止策を講じさせる。 積載可能重量は車輌によって違うので、積載量の制限を正確に理解させて荷主から過積載の求めがあっても断るよう指導する。危険物を輸送する場合は、その取り扱いについて理解を深めさせる。

④道路状況や気象状況を踏まえつつ、計画に基づく運行を行うよう指導する

運行前に道路状況・気象状況などの情報を入手し、安全な経路の検討を行って運行経路を選択する。計画に基づく運行を行うことで、安全で効率的な運行となることを指導する。

⑤防衛運転の徹底や、非常時に実施すべき対応を指導する

歩行者や他の車輌などの行動特性に基づく危険の予測の必要性を、事故事例の説明や危険予知訓練を通じて理解させる。日常点検や運転行動をしっかりと行うために、指差呼称や安全呼称を習慣づけさせる。交通事故や車両故障の発生時や自然災害遭遇時には、警察・事業者への報告及び安全な場所への退避を行うように指導する。

⑥適性診断の結果を指導・監督に活かす

運転者適性診断は、視覚機能・判断や動作のタイミング・動作の正確さ・注意の配分や性格などについて測定する。診断結果を日々の指導・教育時などに活用するとともに、結果を真摯に受け止めて自覚させることが大切。

⑦運転者と密にコミュニケーションをとり、健康管理を徹底する

交通事故の要因として、過労状態・睡眠不足・体調不良・飲酒運転・風邪薬などの服用による眠気・運転技能への過信・焦りなどがある。これらを引き起こさないよう、疾病が及ぼす影響や健康診断の受診やストレスチェックの重要性を認識させ、健康状態を必ず申告させるようにする。

これらに加えて、事故惹起運転者・初任運転者・高齢運転者には、それぞれに合わせた「特別教育」がある。トラックドライバーは一瞬の油断が、人の命に関わりかねない重要な職種だ。労働環境の改善とともに、モラルやモティベーションの向上にも努めなければならないといえよう。

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