カーボンニュートラル事業にボルボLNGトラクタが参入

大型トラックに採用されているディーゼル機関は、経済性・効率性・利便性などに優れているものの、環境性には大きな問題を抱えている。ひとつは内燃機関である以上、どうしても発生してしまう大量のCO2だ。これは、地球温暖化の要因とされるガスで、世界的にその排出を抑えるべく各国が厳しい規制を行っている。もうひとつが、SOx・NOx・PMといった有害物質である。我が国では1990年に石原慎太郎東京都知事(当時)が記者会見において、その有害性を強烈にアピールしたことで、一挙にディーゼルエンジンの印象が悪化した。

乗用車や小型トラックでは、ハイブリッド・EV・燃料電池などの技術を使用した車輌が開発され、環境問題の改善に一定の道筋をつけた。しかし、大型トラックにおいてはディーゼル機関に勝る代替動力の開発には至っていない。そのような中で、実用性に期待が持てる動力として、注目を集めているのが天然ガストラックだ。

これは、天然ガスを燃料とした内燃機関を使用するもので、必ずしもCO2の排出を0にするものではない。しかし、化石燃料の中ではその排出量が最も低いことに加えて、排気ガスの有害物質も極めて少ないことから、環境に優しいエンジンとして認識されているのだ。また、ガソリンやディーゼルを燃料とする内燃機関と、基本的に同じメカニズムで稼働が可能なため、新たな知識や技術の習得が限定的だというメリットもある。

こういった背景から、環境省では2021年度から「小規模分散型LNG充填所ネットワーク構築による大型トラック物流の低炭素化手法の実証」を開始。三菱商事が代表事業者となり、いすゞ自動車などが参加している。その概要は、LNG充填所に併設するCNG 製造・充填装置の新規開発と実証を通じ、

・従来、気化したガスの再液化に使用していた液体窒素の使用量減による事業経済性の向上。

・同一拠点でLNG・CNGを充填可能とすることでLNGトラックユーザーの利便性向上を図り、低・脱炭素化が困難な大型トラック物流における現実的な最適解としてLNGトラック普及・拡大を目指す。

というものだ。

この実証実験に、2024年10月からボルボのFH4×2LNGトラクタ2台が参加している。ボルボは2017年から欧州でLNGトラクタの販売を開始しており、すでに6000台以上が市場で稼働しているという実績を持つ。今回採用された車輌は、スーパーキャブ仕様で排気量が13ℓ。2024年モデルのディーゼル車と、遜色のない460PSの馬力を誇る。

最大の特徴は、天然ガスと軽油を併用するデュアルフューエルタイプであることだ。これは、圧縮天然ガスに軽油を混合させて着火源として使用するという仕組み。ディーゼルエンジンとほぼ同等の熱効率で、天然ガスがなくなっても軽油だけで走行が可能というものだ。燃料タンクは天然ガス205㎏・軽油170ℓ・アドブルー64ℓで、すべてが満タンのときには、800㎞~900㎞ほどを走行することができる。

この実証実験は2024年度でひとつの区切りを迎えるが、当初の目的である天然ガス充填装置の設計を完了させるなど、着実に成果を生み出している。現在、世界的に頻発する異常気象の状況を考えれば、地球温暖化の防止は待ったなしの状況である。スムーズな物流体制の維持と地球環境改善の両立を目指して、天然ガスの利用に期待がかかっている。

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