自動車の整備・点検を行なうには、その仕組みや原理などの知識を有していなければならない。国家資格である自動車整備士は、そういった知識や技術を保持していると国が認めた技術者だ。とはいえ、近年ではEV/ハイブリッド/CNGなど、従来からあるガソリン/ディーゼルエンジンとはまったく違う仕組みを持つ車輌も増えつつある。自動車整備士資格は一度取得すれば一生有効なものではあるものの、常に新しい技術を学んでいかなければ現場では役に立たなくなりかねないのだ。
こういった背景のなか、「UDトラックス」では世界レベルでトラックの整備・点検などといった、ディーラーにおけるアフターマーケット業務に携わる従業員の、知識や技術の向上に力を入れている。その一環として行なわれているのが「UD現場チャレンジ」である。この催しはUDトラックスが市場展開する国々を対象に、競技形式で行われるトレーニングイベントだ。2014年に第1回大会が開催されてから隔年ごとに開かれており、今回は5回目・10周年の節目にあたる(2020年はコロナ禍で中止)。
予選参加は40か国・9地域の723チーム・2732名。2024年11月12日に行われた決勝には、10か国・12チームが埼玉県上尾市の「UDエクスペリエンスセンター」に集結してその知識・技術を競い合った。競技部門は、クオンの部(オーストラリア2チーム/シンガポール/日本3チーム/南アフリカ)とクエスターの部(アラブ首長国連邦/インドネシア/サウジアラビア/タイ/フィリピン/ボリビア/南アフリカ)のふたつ。
競技は2名~4名でひとつのチームを組み、以下の5つの分野について実施された。
・エレクトリック
配線図を参照し、ワイパーモーターを結線して示された課題通りに作動させる。
・エンジン
エンジンを精密測定器で測定し、良否の判定と問題個所の対処を行なう。
・テックツール(検査機)
オシロスコープ機能を使用してセンサーの信号テストを実施し、異常個所の特定・診断を行なう。
・トランスミッション
組み立てられたトランスミッションの動作テストを実施し、問題の確認と対処を行なう。
・コマーシャル
故障に対処するための部品管理が、正しく行なわれているか確認する。
チームはメカニック/部品スタッフ/フロントなどで構成され、審査員との協議はチームリーダーが行なうように定められている。ひとり1人の技量だけではなく、メンバーがそれぞれの役割を果たすことでチームの総合力が試されるというわけだ。審査はUDトラックス本社のメカニックがあたり、
・決められた手順に従った作業・行動をしているか。
・指定の工具や方法を正しく使用・実行しているか。
・整備要領書に記載された注意事項・安全遵守事項を守っているか、
などといったことをチェックする。競技時間は30分なので効率的な作業が求められ、知識・技術だけではなくチームワークが勝敗を左右する重大な要素になるのだ。
激戦の結果、クオンの部では日本代表(優勝:深谷カスタマーセンター/準優勝:西淀カスタマーセンター)がワンツーフィニッシュを果たし、3位には南アフリカ代表チームが入った。クエスターの部は、優勝:インドネシア代表/2位:サウジアラビア代表/3位:フィリピン代表であった。トラックは過酷な条件下で走行を余儀なくされることが多いだけに、メンテナンスは安全走行のために非常に重要な要素となる。こういったイベントを通じて、豊富な知識や高い技術を持つメカニックが増えることを願わずにはいられない。