ひと昔前のトラックには、キャビン上に存在感のある3つ並んだ緑色に光るランプがあった。大きなトラックと言えば三つ目ランプ、と言うくらいトレードマーク化したパーツだったが、その役目を知っている人はそれほど多くなかったような気がする。そして、現代においては、その姿を見かけること自体が珍しくなっている。
懐かしく思う方も多いその緑に光る三つ目のランプの正体は「速度表示灯」や「速度表示装置」と呼ばれるもので、かつては大型車には設置義務があった。このランプはその名のとおり、大型トラックの速度を周囲に知らせるのが目的だった。そして、このランプは対向車側から見て右側、左側、真ん中の順で速度に応じて点灯するシムにになっていた。(40km/h未満では右が点灯、左右点灯は40km/h~60km/h未満。3つ全点灯の場合は60km/h以上を意味していた)。
外部の車に速度を伝える意味は、前方から走行してくる大型トラックのランプの点灯具合でスピードを把握し、周囲が安全に走行する注意喚起のため。
大型トラックはボディの形状や車体が大きいので、一般乗用車と比較すると周りから見て速度がわかりにくい傾向にあった。また、大型トラックの接触事故が多かったために。歩行者や他のクルマからでも速度を分かりやすくしたのだ。
こうした役目を持っていたため速度表示灯は手動での点灯や消灯が禁止されており、自動で点灯しなくてはならなかった。また、速度表示灯は前方100mの距離で、点灯数や点灯状況を確認できなければならない、車内で点灯や消灯などの作動状態を確認できなければならない、などのルールもあった。
ちなみにランプが緑色なのは、ポジションランプやウインカーなど、ほかのランプと誤認識しないため。こうして安全な運行にひと役買っていた速度表示装置だが、1999年の道路運送車輌の保安基準の一部改正に伴い、2001年に装着義務が廃止となったことで、その数を一気に減らしていった。
ただし、速度表示灯の設置義務が廃止されただけなので、任意での装着は可能。今でも装着車輌を見かけることがある。そして、この速度表示灯の装備義務がなくなった2年後、大型トラックには90km/hで作動するスピードリミッターの装備が義務付けられた。
速度表示灯の歴史は旧く、その装着義務は1967年にさかのぼる。今どきのトラックはデザインも洗練されてきているすが、ときおりキャビン上に三つ目ランプを装備した古めのトラックを見かけると、その姿が逆に新鮮に見えるものだ。
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