143名の猛者がひたちなかに集結、第56回全国トラックドライバーコンテスト開催

「全国トラックドライバーコンテスト」は、1年に1度開催されるトラックドライバーの運転技術や専門知識を競う大会である。主催は、全国の運送会社で構成されている業界団体の公益社団法人・全日本トラック協会(全ト協)だ。本大会の歴史は古く、1969年に第1回目のコンテストが開かれている。2024年は、10月26日から28日かけて第56回大会が開催された(2020年の第52回大会はコロナ禍で中止)。

予選は、全ト協傘下にある各地域のトラック協会で実施している。ただ、一定の基準はあるものの、それぞれの事情に合わせて選抜するという形式をとる。そのため、筆記試験だけを行なうところもあれば本選さながらの実技を行うところもあり、統一した予選会が行われるわけではない。とはいえ、代表選手はいずれも劣らぬ猛者ばかり。それは、表彰台に上った成績優秀者に極端な地域の偏りがないことや、平均点の高さ(1000点満点中879点)を見ても明らかだ。

競技は26日・27日の2日間、茨城県ひたちなか市にある自動車運転安全センター・安全運転中央研究所で行われた。試験内容は、

・日常点検

1日目のコース走行前に実施。日常点検基準による前輪タイヤの点検を行なう。

・コース走行

1日目は簡易コースを前進で、隘路走行・スラローム走行を行なう。2日目は周回コースで課題走行を行ったあと、後退でスラローム走行・S字走行・車庫入れを行なう。

・学科試験

法規・構造機能・運転常識を問う。

となっている。

この大会に権威があるのは、何も全国から選抜された選手が多数集まるからだけではない。確かに、本大会でも4部門(4トン・11トン・トレーラー・女性)総勢142名が技や知識を競い合った。その規模だけでも、十分驚嘆に値する。しかし、ポイントになるのはその内容だ。まず、この大会はタイムトライアルではないし、スリリングなレース技術を競うものでもない。あくまで、荷物を安心・安全・丁寧に運ぶという、輸送事業に従事するトラックのドライバーとして、必要な技術・知識を試すものなのである。

ゆえに、課題や問題は全ト協が国土交通省や警察庁などと協議をして、まるで国家資格の試験といっても過言ではない内容のものを用意している。さらに、審査員は全ト協の職員や会員の運輸事業者などではなく、試験会場でもある自動車安全運転センター・安全運転中央研修所の教官らがあたるのだ。彼らは全国の警察や指定自動車教習所から出向しているプロであり、そのチェック眼は忖度のない厳しいものだ。すなわち、競技内容は法律や現場の実状に合致したもので、審査は平等かつ厳格な基準に照らして行われるのである。

半世紀を超える歴史の中で、事業用トラックドライバーのあるべき姿を求め続けてきた本大会だからこそ、出場する意義は決して小さいものではない。その中で上位入賞をすることは、現場で働くトラックドライバーにとって大きな目標になるのではないだろうか。こういった大会を、社内の自己啓発目標に据えるなどして人材の育成を図り、運輸業界全体の地位向上につなげていってもらいたいものだ。

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