2024年10月23日・25日、埼玉県上尾市のUDトラックス本社敷地内にある「UDエクスペリエンスセンター」に、11か国11名の大型トラックドライバーが、ドライブテクニックを競うべく参集した。彼らは12か国約400名の参加者の中から勝ち抜いた、プロ中のプロといってよいトラックドライバーたちである。
この大会はUDトラックスが主催しているもので、2014年から2年に1度開催されている。2020年はコロナ禍によりバーチャル開催となったため、それを覗くと今回で6回目になるのだ。競技内容は運転技術だけではなく、走行前点検についても試される。競技部門は車種により、「クオンの部」と「クエスターの部」の2つに分かれている。
クオンは、日本でもおなじみのUDトラックスを代表する大型トラック。ビッグサムの後継車として2004年に、当時日産ディーゼルであった同社から発売された。現行の2代目は、2017年から登場している。クエスターは、2013年にタイで発表された大型トラック。当時同社の親会社であったボルボと共同で開発し、日本以外の市場に投入された。現在の親会社であるいすゞ自動車は、同車両をベースにした海外向け車両の生産を、2024年からタイで開始している。
走行前点検競技は10分間と時間が限られていることもあり、あらかじめ点検箇所を電気系・油漏れ・キャビン内計器・ホイールナットなどの22項目に絞っている。各競技者は道具を使用して、それらを手際よく進めていくわけだ。審査員はその様子をチェックし、見るべきところや確認するべきところを、きちんと点検しているか否かを注視している。
この競技が難題といわれるのは、この点検箇所にあらかじめわざと複数のエラーを潜ませていることだ。競技者はこれを発見・指摘し、対応しなければならない。日ごろの走行前点検を、いかに真剣に行っているかが問われるわけだ。選手たちも競技を通じて、走行前点検の重要性を改めて認識したことだろう。
運転技術競技については、燃費効率・安全運転・操作技術・駐車技術を競う。競技はコースを走行することで、各所に設けられた課題をクリアするという方式だ。コースには、隘路・坂道・でこぼこ道のほか一時停止などがあり、助手席に同乗している審査員が審査項目に沿って判定する。最後が車庫入れだ。大型車は死角が多いので、周りに細心の注意を払う必要がある。これらの競技に時間の目安はあるものの、重要なのは正確さと安全性だ。決して、タイムトライアルではないのである。
クオンの部の優勝は、オーストラリア代表のマッド・モドラ氏。本国ではクオンのオーナー兼オペレータだそうで、この大会を経て「UDのブランド理解を促進し、多くの学びを得た」と述べている。クエスターの部の優勝は、インドネシア代表のタウフィクル・ウルム氏。「周囲のサポートに感謝している」と話した。
日本からは、クオンの部で千葉章氏が登場。最優秀走行前点検賞と、最優秀運転技術賞を獲得した。今回惜しくも入賞を逃した選手はもとより、決勝の地に参加できなかったトラックドライバーは、2年後の大会を目指してすでに始動しているという。トラックドライバーのモティベーションや地位の向上、業界全体の活性化を推進するためにも、こういった大会が続くことを願いたいものだ。
