【物流2024問題】運輸物流業界の平均年収ランキングに見る、待遇の違い。大手企業の高級を支える、下請け構造による労働力の搾取ぶり

これまで個々の業界、企業での就労状況や待遇はシークレットというのが暗黙の了解だったように思う。だから就職、就業してみなければ分からないという状況が続いてきたのだろう。

けれども実際には現場の仕事は募集要項では分からない。勤めてみて初めて知った、体験したという段階でも、実際に訪れ面接をすれば、試用期間などで条件が食い違うことに気付かされて落胆したという声もある。

最近は、こうした社内の事情もSNSやネットでの書き込みで伝わってくるようになり、年収など給料面だけではない待遇や、社内の雰囲気など実際に入社して勤めなければ分からない情報も、徐々に明るみになってきた。

それでも一番気になるのはやはり給料面だろう。トラック事業者の平均年収は、他の業種に比べて2割程度低いと言われている。そんななか、注目すべき情報がある。

運輸物流業界の平均年収ランキングが発表された。これは日本最大級のデータベースを誇るSalesNowDBが発表したもので、日本全国540万社の中から運輸物流業界だけを抽出して平均年収で比較して上位10社が発表されている。

これを見るとヤマト運輸を傘下に収めるヤマト・ホールディングスは全体でも5位に入っていて、宅配便大手らしい高待遇ぶりを見せつける結果となった。

しかし、これはヤマト運輸で実際に荷物を運んでいる人の平均年収ではなく、ヤマトホールディングスの正社員全体の平均年収ということに注意が必要だ。

しかもヤマト運輸の売り上げや収益でさえ、同社の正社員だけで達成しているものではない。パート社員や派遣社員、下請けなどが働いて支えることでヤマト運輸の売り上げが積み上げられているのだ。

そうやって考えてみると、運輸物流業界で平均年収上位の企業は、下請けに支えられている企業がほとんどだ。1位から4位はすべて海運会社でタンカーやコンテナ船などで大量に物資を輸送しており、売り上げも相当なものだが、実際の船舶ではほとんど外国人船員が働いており、海運会社は船を所有しているだけで、運営も子会社や別会社が行なっている。

上位10社のうち、5位のヤマト運輸と7位のNIPPON EXPRESS(日通)だけがトラック輸送を手掛けている企業で、10位に三菱倉庫が入っている以外は、すべて海運会社が上位を占めている。

海運会社の事業における正社員比率が低いのは、構造上仕方ないとしても、運送会社は正社員率を高め福利厚生を充実させるべきであろう。しかし数年前にパート社員を大量に解雇したヤマト運輸には、それを期待することは難しいだろう。

下請け孫請け構造は、運輸物流以外でも幅広い業種で見られるが、これが貧困を産んでいる一因にもなっている。昔のように1億総中流とはいかないだろうが、努力している人が報われる社会になっていかなければ、日本経済は縮小していくばかりとなる。

富裕層だけを相手にして日本経済が支えられると思っていると、景気そのものが低迷し富裕層も破綻することになる可能性が高まるのだ。

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