
運送業のなかでも、荷物を運ぶことを請け負うトラック事業者と、会社や家庭の引越しの際、搬出から運送、設置までを請け負う引越し業者に大別できる。
大手運送会社のなかには引越し業務も請け負っている企業もあるが、多くは専門化しており、引越し業者と運送業者は別の業種と言ってもいいものだ。
しかし引越し業者には繁忙期と閑散期があり、閑散期にはトラックも人も余裕があることが少なくない。ここに目をつけたのがラストワンマイル協同組合である。
中小企業のトラック事業者が設立した同組合は、宅配便取扱数増加や配送ドライバー不足を原因とした業界全体の運賃引き上げ、総量規制等、荷主だけでなく運送業者を含む全ての関係者が抱えている課題を解決することを目的に設立された。
具体的には組合員向けの小口配送業務の共同受注や組合員の車両用燃料の共同購入を主な事業としている。
さらに今回、「LCC配送ソリューション」の一環として、東京都内で大型貨物の配送サービスを新たに始めた。これは「3辺の合計が400cm」までの荷物を安価な運賃で取り扱うというもの。
大型貨物の宅配はこれまで、一部の大手宅配事業者のサービスに限られてきた。同組合では、荷主企業に多様な配送手段の選択肢を提供するべく、全国の引越し会社と協議を重ねて、まずは東京都内で大型貨物の宅配を行う体制を整えたのだ。
これは荷物の集荷や配送だけでなく、家電や家具の設置サービスなども請け負う。物流の工程の一部、必要なサービスのみを提供することも可能らしい。

さらに今後は関東主要都市へサービスの拡大を図っていく方針だ。現時点で大型貨物LCC配送サービスに連携している企業は以下の8社である。
・ハイ・グッド引越センター(有限会社ハイグッド)
・ガード引越センター(かみいちサービス株式会社)
・人力引越社(株式会社キョウトプラス)
・LIVE引越サービス(中尾運輸株式会社)
・レディアス引越センター(株式会社レディアス)
・アクティブ感動引越センター(恵実物流株式会社)
・ペガサス引越サービス(ペガサスサービス株式会社)
・BIG引越センター(株式会社ビッグサービス運輸)
今後、このサービスが全国に広がればLCC配送サービスとして、大きな稼ぎ頭となる可能性が高い。
小口配送としては翌日配送などのスピード感を期待している消費者もいるが、大型貨物は配送スピードよりも配送料の高さの方が重視される傾向にある。引越し業者と連携することで、大型貨物を低額で運んでもらえ、さらに引越し業者ならではの設置サービスなども受けられるのは魅力的に映るに違いない。
ただし大手運送会社から小口配送を請け負う立場とすれば、大型貨物のLCC配送サービスはライバルともなる商品だけに、サービスの拡大によって組合の果たす役割が変わっていく可能性もある。
ともあれ中小トラック事業者が力を合わせ、知恵を絞って物流を支えていこうとする姿勢には共感しかない。
