ディーゼルエンジンに必要なアドブルーってなに?

ディーゼルエンジンを搭載したトラックの側面に青いキャップの容器が設置されているのを見たことがないだろうか。これは、今回お話しするアドブルーを入れるために容器だ。では、アドブルーとはなにか?

シンプルに説明すれば「排出ガスをきれいにするために必要不可欠な高品位尿素水」のこと。しかし、これだけだとよくわからない方も多いのではないだろうか。そこで、もう少し詳しく解説していきたい。

アドブルーは高品位尿素水で、常温で保存できる無色・無臭の液体。これは、一部のディーゼルエンジン車に搭載されている「尿素SCRシステム」で使用されている。「一部の」というのはディーゼルエンジンにはすべて「尿素SCRシステム」が搭載されているわけではなく、その歴史が比較的浅いために旧いディーゼルエンジンには採用されていない。

尿素SCRというシステムは2004年。株式会社日産ディーゼル工業(現UDトラックス株式会社)によって世界で初めてディーゼルエンジン車に搭載、実用化された。

アドブルーを使う「尿素SCRシステム」はディーゼルエンジンが排出する有害な「窒素酸化物」と「アドブルーに含まれるアンモニア」が化学反応を起こすことで、窒素と水に分解され排気ガスが無害になる効果を持つ。このシステムが誕生した背景には、大気汚染につながるディーゼルエンジンからの有害物質を含む排出ガスを可能な限りクリーンにしたいという意図があるわけだ。

この「尿素SCRシステム」だが、マフラー内で排出ガスに対してアドブルーを噴射すると、アドブルー内の尿素がエンジンの排熱で加水分解されてアンモニアガスになる。このアンモニアガスが窒素酸化物を窒素に還元することで、排気ガスを浄化するというメカニズムになっている。しかし、このアンモニアは可燃性の物質。そのまま車載するのにはリスクがある。そこで登場したのが、尿素水という形で安全に車載できるアドブルーというわけだ。

さらに使用される尿素水に不純物が混ざっていると、正常な化学反応の妨げとなる場合もあるため、尿素SCRシステムに使用されるのは高品位尿素水である必要がある。いまではすっかりおなじみとなったこの「尿素SCRシステム」はディーゼルエンジンのほか、船舶や火力発電所などの排気ガス処理にも使用されている。

最後に、少しアドブルーに関する小ネタをご紹介しよう。エンジン使用中にタンク内のアドブルーがなくなった場合の正しい対処法は、「エンジンを切らずにアドブルーを追加注入する」。アドブルーが切れても急にエンジンが止まるということはない。しかし、アドブルーがない状態では排出ガス浄化システムとして機能しないばかりか、尿素SCRシステム搭載のディーゼル車でアドブルーがなくなった状態で走行を続けると、クルマに大きな負担がかかりエンジンやセンサーのトラブルにつながる。そのため、アドブルーの残量には注意が必要だ。

また、エンジン始動中にアドブルーがなくなってしまった場合、エンジンを止めると再始動できなくなってしまうことも重要なポイント。アドブルーは多くのカー用品店やガソリンスタンドで取り扱っているが、無用なトラブルを避けるためには残量のチェックが重要だ。

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