つや消しオリーブドラブのカラーに角張ったキャビンとゴツゴツした荷台。そんな自衛隊のトラックを一般道や高速道路、サービスエリアなどで見たことがある人も多いことだろう。自衛隊が使用している専用のトラックは、演習場(極論をいえば戦地)や災害現場、海外PKOなど特殊な現場での仕様に耐えるため、キャビンもボディも、足回りなどメカ的部分も専用に開発されている。不整地を走ることが前提になっているため、全輪駆動になっているのも大きな特徴だ。
また一般のトラックと違い、荷台に人員を乗せることも法的(自衛隊法)に認められている。そのため、自衛隊のトラックの荷台には折りたたみの椅子として使われる「木製サイドラック」が備えられ、乗車定員もそれぞれ決められている。ちなみに大型の「7t(トン)トラック」では操縦室の2名と荷台の32名、合わせて34名とバス並みの人数が乗れるようになっている(乗り心地は推して知るべし……だが)。
11月27日に静岡県の富士スピードウェイにて開催された「ジャパントラックショーin Fujispeedway」では、トラックメーカーや架装メーカーが出品したトラックの展示や本コースを使ったトラックのパレードランのほか、自衛隊の車輌も展示され、間近で見ることができた。軽装甲機動車や高機動車のほか、73式大型トラック(3 1/2tトラック)と73式中型トラック(1 1/2tトラック)をベースとした1 1/2t救急車も展示されていた。
73式大型トラックは1973年(昭和48年)より調達開始された車輌。いすゞ自動車が製造し、現在のモデルは8代目にあたる。2003年(平成15年)製造分の車輌から製造コストの削減・一部パーツの民生品との共用化・製造ラインの民生車輌との共通使用の関係から「3 1/2tトラック」と名称が変わっている。この3 1/2tとは「3トン半」という標準積載量のことで、悪路走行時や慎重な取り扱いが必要な物品を運ぶときの最大積載量となっている。これとは別に、一般道を走行するときの最大積載量も設定されている。ちなみに乗車定員は標準ボディの車輌が22名、ロングボディの車輌が24名となっている。
東日本大震災の際には、ほかの自衛隊車輌が津波による水没で走行不能になるなか、唯一この73式大型トラックのみフル稼働。その耐久性の高さを国内外に実証することができた。
73式中型トラックは同じく1973年調達開始。日野自動車とトヨタ自動車の共同開発で、現在調達されている車輌は1990年(平成2年)に採用された高機動車のシャシーを使用している。また73式大型トラックと同様、2003年より「1 1/2tトラック(通称:1トン半)」と名称変更されている。乗車定員は18名となっている。
会場にいた車輌はこのトラックをベースにした「1トン半救急車」。トラックは幌車であるのに対し、救急車は完全クローズドキャビンを持つパネルバンで、キャビンと荷室の間には中央にドアがあり、行き来できるようになっている。荷室内には左右に二段ベッドを装備し、また中央にも担架を設置することで、合わせて5名の患者(負傷兵?)を搬送できる。また二段ベッドは上段をたためば長椅子としても活用でき、左右4名の合わせて8名の搬送も可能になっている。積載する医療用資器材は消防で使われている高規格救急車とほぼ同じだ。
大型トラック・中型トラックともにキャビンが独特の角張った形状になっているのも大きな特徴。これは、いざ戦闘となった際にはキャビンに防弾板を装備したり、カムフラージュの偽装をするためなのだろう。
ちなみに自衛隊ではこれより大型の74式特大型トラック(7tトラック)と10tトラックも使用。こちらは三菱ふそうスーパーグレートや日野プロフィア、いすゞギガがベースとなっている。戦車など大型の装備を運ぶトレーラーのトラクタもそれらの車輌がベースだ。またこれらの専用トラックのほか、市販の小型・中型トラックを使用した「業務トラック」という車輌も自衛隊には配備されている。