エンジンオイルで2024年問題を解決! DPFの煤を防ぐオイルを開発した出光が、焼津のマグロ運送会社に製品を寄贈

2003年の排ガス規制により、全メーカーのディーゼル車に装備されるようになった排ガス浄化装置DPF(メーカーによってDPD、DPRと呼ぶものもある)。排ガスに含まれる煤(粒子状物質)を除去する装置だが、これは車輌の走行中または停止中にその装置のフィルターに溜まった煤を燃焼させ、取り除く機能を持っている。大型のエンジンを装備するトラックはその煤が大量発生するため、ひんぱんに車輌を停止させてDPFのフィルターに溜まった煤を燃焼させる「手動再生」を行う必要がある。

そのDPFの手動再生によって発生する待機時間が、ドライバーを無駄に拘束する時間にもなり、その改善が「物流の2024年問題」の解決手段のひとつになると考えた「出光興産」では、そのDPFの手動再生時間を解消させるディーゼルエンジンオイル「AshFree」をリリースした。このオイルはDPFの目詰まりと、その手動再生の原因となる煤をを抑えるのではなく、そもそも「発生させない」というコンセプトを設定。同社独自の添加剤処方技術によって煤のもととなる金属添加剤を使用しないディーゼルエンジンオイルを20年の期間をかけて開発した。

出光興産では一般的に「煤」と呼ばれるDPFの目詰まりを起こす物質を「灰」と表現。商品名どおり灰を発生させないオイル、アッシュフリーというわけだ。このオイルは灰を発生させないことでDPFの寿命延長にも絶大な効果を持ち、DPFの整備・交換など高額なメンテナンス費用を大幅に削減させることも期待できる。

出光興産では、このAshFreeにより、DPFの問題に直面する多くの物流企業をサポートしたいという想いのもと、物流の円滑な輸送を支える 「円滑輸送サポートプロジェクト」 の始動を宣言。その第 1 弾として、まぐろ・カツオの水揚げ日本一を誇る静岡県は焼津港の物流企業に対し、同オイルを寄贈するセレモニーを 2024年11 月 21 日に開催した。

寄贈式の会場は同市のアポロステーション150号焼津。出光興産からは潤滑油二部セールス&マーケティング課の佐藤俊仁課長と潤滑油二部セールス&マーケティング課の霜崎英紀チーフエンジニアが登壇。佐藤課長はAshFreeが2024年問題の解決策としていかに貢献するかを解説。そして同社の円滑輸送サポートプロジェクトへの意気込みをスピーチし、霜崎エンジニアが同製品のDPFに対する効果や開発秘話を語った。

続いて「静岡県貨物運送協同組合」を代表して、焼津で水揚げされた冷凍マグロを輸送する運送会社「有限会社ハッスイトランスポート」の佐伯靖則社長が登壇。DPFの目詰まり問題の現場での実態を話してくれた。

「DPFの手動再生が必要となると、ドライバーはクルマを一度停めて約 30 分ほど詰まった汚れを燃焼させる時間を余儀なくされます。⻑年使っているトラックだとフィルターも詰まりやすく、手動再生の頻度も増します。うちの場合だとひどい時は同じ車輌で 1日に 2 回発生していました。」

「ぼくたちは全国に冷凍マグロを運んでいますが、その手動再生のタイミングが高速道路にいざ乗ろうとしたときに起こったらどうなるでしょう? そう簡単には停まれません。駐車場も空いてなければ走行距離はどんどん伸び、50km を越えると手動再生はできなくなり、整備工場でしか解決できなくなります。そうなるとエンジン制御がかかりスピードが時速 50km ほどしか出なくなり高速を降りなければなりません。冷凍車はエンジンで冷やしているので魚の鮮度にも影響し、値段がつかない事態も起こり得ます」と佐伯社長はDPFの目詰まりが物流に深刻な影響を与えていると訴えた。

そしてAshFreeを使用してからは「手動再生がほぼ皆無に近いくらい、とにかく減りました。1回 30 分時間が取られる手動再生が週に3回発生したとすると約1時間半、これが 4 週あるので 1 ヶ月だけでも約6時間かかっていたのが削減されました」と、同オイルがドライバーの労働環境の改善に実に効果的であると話してくれた。

出光興産では、この焼津のほか、日本各地で「物流の 2024 年問題」に直面するより多くの企業をサポートするべく、「円滑輸送サポートプロジェクト」の活動を広めていくとのことだ。

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