用途が広く、最新性能が詰め込まれている高所作業車

高所作業車とは、その名のとおり高い場所の作業をするために特殊な装備を持った車輌のこと。定義上では自走することが条件なので、単に高い場所に届くゴンドラをつけているだけなら、高所作業台という扱いになる。さらに、作業用の床(作業バスケット)が、

・2m以上の高さに上昇する。

・昇降するには人力以外の動力を用いる。

といった条件が付加されているのだ。

ここまで細かく規定されている理由は、労働安全衛生法の「高所作業車構造規格」に定められているからである。この法律は、のように車輌に関して規定しているのではなく、作業者が安全に同車輌を扱うためのもの。ゆえに、同法では同車輌の運転者資格についても規定を設けているのだ。それによると、車輌の操作は「高所作業車運転技能講習または高所作業車運転特別教育を修了した者」に限られている。もちろん、公道を走行する場合にはこれとは別に、車輌に応じた道路交通法に基づく運転免許が必要だ。

高所作業車はトラックをベースにゴンドラを架装していることから、動力はディーゼルエンジンを採用しているものが主流である。最近では、電動モーターを採用するものが増えつつある。これは、環境問題に対応することに加えて、車輌の電動化や自動運転化を見据えた流れといってよいだろう。駆動は主にタイヤを使用した車輪であるが、クローラタイプも存在する。

変わったところでは、鉄道線路上を走行する鉄輪を備えたものがある。タダノから発売されている「AT-150DW」などがそれだ。ベースはトラックなので、走行のための駆動にはタイヤを使用。線路上では案内用の鉄輪を降ろすが、タイヤを線路に接地させて駆動力を得ている。鉄輪を装備することにより車輌総重量が重くなるが、8トン限定免許で運転できるように軽量化を図るなどといった工夫もしているのだ。

高所作業用のゴンドラを動かす昇降装置の種類には、

・シーザースタイプ:パンタグラフ式。

・垂直昇降タイプ:昇降マスト式。

・直進ブームタイプ:伸縮ブームがまっすぐに伸縮する。

・屈折ブームタイプ:伸縮ブームに関節機能を持つ。

などがある。

同車輌は電線などにかかわる作業が多いことや高い場所で作業をすることから、安全性には万全の備えが必要になる。作業者はもちろんだが、周囲に通行する人や車輌があるときには、とくに注意をしなければならない。そこで、作業時には警備員を立てるなどといった安全対策をとるのだが、車輌にも様々な安全装備が施されている。

まず、作業中に何らかの不測の事態が発生した際には、直ちにゴンドラを停止できるように緊急停止ボタンや緊急降下装置が備えられている。また、ゴンドラの動きによって車輌本体のバランスが崩れれば転倒の危険があるために、傾斜センサー・車体傾斜角規制装置・過積載防止装置など、複数の安全装置で監視しているのだ。

高所作業車は街中での作業も多いことから、各メーカーは用途や車種に応じて細かな仕様の調整や、安全装置などのオプションのバリエーションを充実させている。外見は武骨な感じも否めないが、安全性・作業性・環境性に配慮した、最新のテクノロジーを搭載する魅力的な車輌といえるのではないだろうか。

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