4月に労働基準法の残業時間規制の猶予期間が終了し、トラック事業者もドライバーの運転時間や労働時間の規制を受けることになった。これが物流2024問題の一番の原因と言われるものだ。
従来より労働時間を短縮するにしても、運転時間の短縮をすると売り上げが激減してしまうので、経営が成り立たなくなってしまう。残業時間は上限が定められているため、運転時間をなるべく確保しつつ、それ以外の無駄を省くことが求められるのだ。
そのひとつが荷待ち時間問題だ。これは荷主の拠点へ到着後、受け付けをしても、実際に積み下ろしが行なわれるまでに何時間も待たされることが多いことである。
荷主側にとっては、早めに到着してもらうことで時間的な余裕はできるのだろうが、それが1台ではなく何台も十数台も連なれば、トラックの荷待ち時間も増大してしまう。
最近は荷待ち時間を1時間以内と契約し、延長した場合には追加料金を支払う契約内容になっているにも関わらず、そうした追加料金の支払いを無視する荷主もいるらしい。
大手企業では荷待ち時間を激減させたというニュースもある一方で、無名の企業ではそうした努力を行なってもブランドイメージの向上につながらず、メリットを感じないことから相変わらずの状態が続いているところも少なくないようだ。
付帯作業についても、積み降ろしをドライバーに行わせるのは別料金とするようガイドラインに定められているが、相変わらず積み降ろし作業をドライバーに強要しながら料金を払おうとしない荷主もいるようだ。さらに商品の売り場への陳列までドライバーにさせる荷受け人もいるらしい。
こうした個別のケースも従来なら職場の愚痴で終わってしまったのかもしれないが、SNSやネット記事のコメント欄などにはドライバーの生の声が溢れているから、悪質な荷主の実態も伝わってくる。
トラックGメンがこうした悪質な荷主を取り締まっているという情報もあるが、トラックドライバーでそうした現場に遭遇したとか、取引先が指導や是正勧告を受けたという話は聞いたことがないという発言ばかりがネット上に溢れている。
全国の物流業界に対して、たった数百人規模ではなかなか遭遇するのも難しいのだろうが先日、大手オフィス家具メーカーのイトーキが公正取引委員会に警告を受けていることを当媒体でも報じた。それは荷主という優位な立場にあることを利用して、付帯作業を強制していながら、それによって生じた残業代を支払っていなかったのだ。
それでも警告を受けて、本来受け取れるはずの付帯作業による残業代をトラック事業者に支払うだけで済んでいるのだから、罰則としては緩いものだと言えるだろう。ブランドイメージのない中小の荷主では、さらにダメージは少ない。
トラック事業者に対して残業時間などを規制するだけでは、物流2024問題が解決に向かうことは難しい。無駄な労働時間を削減して、収益を改善しなければ、ドライバーの待遇改善は実現できない。
そのためには悪質な荷主を改善する必要がある。不当な運送契約や不払いなどをした際には厳しい罰則を導入する必要があるのだ。