【物流2024年問題】トラックドライバーの労働時間短縮に立ちふさがる、長い荷待ち時間という問題は果たして解決できるのか

Truck on the road with load of boxes. 3D Rendering

トラックドライバーの仕事は、たいへん過酷だといわれている。確かに、長距離走行や重い荷物の積み降ろしなど、肉体的・精神的な負担が大きい。しかし、現場においてそれ以上に神経を使うのが、出荷先や着荷先への到着時間だといわれている。なぜならば、渋滞などの道路事情が都度変化することで、正確到着な時間を読むことが難しいからだ。

ところが、荷主側ではそれに配慮することが少ない。その理由は、

・トラック駐車場・バースに限りがある。

・倉庫作業の段取りがある。

・倉庫作業員の負担軽減。

・倉庫所在地周辺への配慮

などである。決して不当な押し付けとまではいえないのだが、荷主と運送事業者ではパワーバランスに偏りがあるために、どうしても荷主側の要望が一方的に通りやすい。運送事業者が過当競争のあまりに、要望を安易に受け入れてしまうといった背景も否定はできないだろう。

しかし、実際に「2024年問題」が現実化したことで、何らかの改善措置を考えなければ日本の物流は破綻しかねない。荷待ち問題の解決は、待ったなしの状況に追い込まれているといっても過言ではないのである。2021年1月~3月にかけて行なわれた国土交通省の「トラック輸送状況の実態調査」によると、1運行あたりの荷待ち時間の平均は1時間34分で、荷待ち1回あたりの待ち時間の平均は1時間13分であったという。

この調査結果は、トラックドライバーの実感からすると、意外に少ないと思えるかもしれない。実際に、4時間~5時間程度待たされたなどといった話も聞く。こういった感覚の差には、目的地周辺で行われた時間調整などの捉え方に差があるのだろう。いずれにせよ、待ち時間は休息ではなく労働時間になるから、「2024年問題」を深刻化させる要因になってしまっていることは間違いない。

この状況を放置すれば、いずれ運送事業者は立ち行かなくなる。そこまでいかなくても、引き受け荷物の量を大幅に減らさなければならなくなるのではないだろうか。そうなると、荷主側も安穏とはしていられない。これまでのような一方的な要望を押し付けていたのでは、早晩配送の引き受け手がなくなってしまいかねないのだ。そのような状態になってからでは、もはや手遅れとしかいいようがない。

これは運送事業者も同様で、自社で担える荷物量が減少すると収益が低下することは避けられなくなる。小規模運輸事業者はさらに厳しい状況になるから、下請け先もこれまでのような条件で荷物を引き受けなくなってしまう。このような負のスパイラルにはまれば、体力のない運輸事業者はひとたまりもないだろう。

そういった事態に陥らないためにも、運輸事業者と荷主は物流業界の仲間として、双方が成り立つように協力して解決を模索する必要がある。そのためには、荷待ち問題は早急に対応が求められる問題だといえよう。そこで、スワップボディや物流施設駐車場予約システムといったハード/ソフトの開発・導入のほか、運送事業者と荷主の配送時間・運賃に関する相互理解が必要になってくる。また、運送業界の多重下請け構造を解消し、共同配送や中継輸送などを推進することも大切だ。「2024年問題」をきっかけに、物流業界全体の構造改革が求められているのである。

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