【物流2024問題】喫緊の課題になっている大型トラック休憩場所の確保

トラックドライバーは荷物を運ぶ仕事をしているが、同時にひとつ間違えれば人命にかかわる機械(トラック)を操作するオペレーターでもある。そのため、常にベストコンディションであることが望ましい。厚生労働省はそういった労働環境を作り出すべく、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」で「430休憩」の制度を明確化している。

その内容を簡単にいうと、「4時間を超えて運転する場合は、30分以上の休憩などを取らなければならない」というものである。運転業務は渋滞などといった交通環境に左右されやすいので、このルールを守りやすいように2024年4月から取得方法に幅を持たせる改正が行われたわけだ。

とはいうものの、現場を担うトラックドライバーにとって「430休憩」を守るのは簡単ではない。なぜならば、大型トラックが休憩できる場所が少ないからである。全日本トラック協会では、使いやすい休憩所の提供を目的として、1970年代から全国にトラックステーションを設置している。しかし、施設の老朽化や協会予算の都合から、利用者の少ないところを閉鎖して、最終的には20カ所程度に絞る予定だといわれている。

高速道路のSA(サービスエリア)・PA(パーキングエリア)にも、大型車輌の駐車スペースが設置されている。しかし、指定車輌の利用や深夜割引による利用の集中などで、停められないトラックが通路や加減速車線にまであふれだしているのが実情だ。これは、たいへん危険な状態といえよう。このように、トラックはルールに沿った休憩が義務付けられているのに、その場所がないという状態に陥っているのである。

このような状況を受けて、高速道路各社では「短時間限定駐車マス」の実証実験を行なうと発表した。この実験は、2023年11月から全国11ヵ所のSAで順次開始されている。「短時間限定駐車マス」とは、大型車駐車マスの一部を対象に駐車時間を60分以内としたものだ。また、SA・PAの駐車マス有料化(乗用車2時間以上、大型車10時間以上は有料)・乗用車と大型車の件用駐車マス導入・駐車スペース拡大などの施策も行われている。しかし、いずれも決め手に欠けるのが実情だ。

大型トラックの駐車場所を増やすためには、さらに大胆な方法を取り入れる必要があると思われる。たとえば、一般道のコンビニ・道の駅などにある駐車場の利用促進や、インターチェンジ付近に民間駐車場を誘致するなどといったことだ。これらを利用するときにはいったん高速道路を降りることになるが、その際には料金を連続で計算するなどといったシステムの導入は不可欠である。

「2024年問題」がきっかけとなって、日本の物流システムは一挙に危機を迎えている。これを立て直すためには、トラックドライバーの労働環境を改善して、担い手を増やすことが不可欠である。そのためには、その場しのぎの対処療法的施策に留まるのではなく、大所高所から広い視野を持って取り組むべきことなのではないだろうか。行政・高速道路会社・トラック業界・物流業界などの、一体となった早急な対策が待たれている。

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