トラックは車体が大きいこともあって、乗用車に比べると取り付けられている灯火類が多い。車高灯などといった車体の大きさを回りに知らせる役割を持つものがあるからで、それらは本来車幅灯程度の明るさであるから、それほど眩しいなどという印象がないのである。ただ、近年では光源にLEDを使用することが増えたこともあり、そのシャープな光が眩しく感じることはあるようだ。
これらとは別に、大型トラックやダンプカーなどの荷台下部に、比較的大ぶりのライトが後方に向かって取り付けられていることがある。これが走行中に使用されていると、後続車を幻惑するほど明るいのだ。このライトは、いわゆる「ギンギラ」の装飾用ランプとは違って、極めてシンプルなタイプのものが多い。
トラックのサイドに付いていることから「側方灯」と呼ぶドライバーもいるが、これは俗にサイドマーカーといわれるもので、車輌の側方を示す役割を持つ。また、これに準じて取り付けられた装飾を目的とする補助灯もあるが、いずれも眩しく思うほどの明るさを持っているわけではない。
「路肩灯」も同様だ。この灯火は、後輪位置や後方間隔の確認のために用いるもので、巻き込み事故を防止する効果が期待されている。車輌直下を照らしているので、後方車輌に悪影響を与えるとは考えにくいのだ。
それでは、後続車を幻惑している犯人がどの灯火なのかというと、「作業灯」「タイヤ灯」と呼ばれる後付けのライトなのである。これらは、名目上「側方灯」や「路肩灯」的な位置づけに置かれているため、走行中に点灯していても問題がないように思いがちだ。
しかし、27Wや48Wといったワット数の高い製品が多く、高輝度LEDを使用しているとヘッドライトやフォグランプに準ずる明るさがある。前を照らす灯火類はレンズカットに工夫があり、対向車の幻惑を抑えるように考えられているが、「作業灯」「タイヤ灯」にはそういった機能がないのだ。
本来、これらのライトは停車して作業を行う場合や、左折の巻き込みなどを防止する際に使用されるものだ。ゆえに、そういった必要性のある場面で、一時的に点灯するような仕組みにしておく必要がある。
しかし、そのためには別にスイッチを設けたり、ウィンカー配線に接続したりせねばならず、取り付けに手間がかかってしまう。また、LEDのシャープな光が格好良く思えるのも事実だ。中には安全性の向上を理由にするドライバーもいるが、前進巡行中に車輌下部に注意を払わなければならないシチュエーションはほとんどない。
そして、何よりも明るい「作業灯」「タイヤ灯」を点灯したまま走る行為は、道路運送車輌法や道路交通法に違反する可能性が高く、検挙の対象になりかねないのだ。実際に取り締まりが行われていることは少ないが、だからといって安全を脅かす行為をしてよいということにはならない。
爆音などの音の暴力はわかりやすいが、こういった光の暴力は被害者が後方車輌に限られるので、見過ごされていることが多いようだ。プロのドライバーなら、周りへの配慮も忘れないようにしたいものである。