いすゞエルフの系譜。ニッポンが誇る、この素晴らしき小型トラック

小型トラックは日常の生活に根付いたクルマだ。昔は酒屋の配達や畳屋、大工に左官屋…商店街や街の職人たちの道具として、街には行き交う小型トラックが見られたものだ。

戦後の復興からトラックは大いに重宝されたが、小型トラックが市民権を得るのはそれよりずっと後のことだった。高度成長期に入った1950年代後期、‘59年にいすゞは小型トラックとしてエルフをデビューさせる。

最初にデビューしたのは1500ccのガソリンエンジンを搭載したモデルで、シンプルなデザインのキャブに丸型2灯ヘッドライトと薄く小さなグリルを与えた愛らしいマスクに仕立てられていた。

翌年には2000ccのディーゼルエンジンを搭載したモデルを追加。これにより一気に人気が上昇し、小型トラックの代名詞と言われるまでになったのだ。

およそ10年間の生産を経て、‘68年には2代目へとフルモデルチェンジを果たす。丸型4灯のヘッドライトをグリルに組み込み、両端が切れ上がった印象としたのと、ウインカーが備わるフロントマスク上部をスラントさせたことで個性的な印象に仕立てた。この個性的なマスクと堅牢な作りでますますエルフは、街の風景に溶け込む人気のトラックとなったのだった。

‘70年には3.5トン積みの中型トラックとしてエルフ350もラインナップに追加される。2代目エルフが登場する前年にはガソリンエンジンで1.25トン積みのライトエルフも先行販売されていたため、トラックだけで3種類、ウォークスルーバンも加えると4種類のラインナップを揃えるまでになった。

‘72年にはより低床な荷台を実現できるFFレイアウトのエルフマイパックも追加投入される。しかし受注生産で価格も通常のエルフの1.5倍と高額だったため、あまり売れず‘78年にひっそりと生産を終了したのだった。

‘75年には3代目へとモデルチェンジ。丸みを強調していたキャブデザインは四角い印象に変わり、大きく見えるデザインもあって、堂々とした風格を感じさせる顔の小型トラックになった。

‘81年になるとマイナーチェンジによりフロントグリルが変更されるなどの改良を受けた。それまでシルバー1色だったグリルをブラック×シルバーの2色塗り分け仕上げにより、いっそう高級感を高めてライバルに差を付けたのだ。

そして1984年、エルフは4代目へとフルモデルチェンジを果たす。キャブはよりスクエアなデザインとされ、機能的な印象を強調するものに。ボディカラーにホワイトも設定され、従来のブルーと共に街を彩るトラックとなった。

ディーゼルエンジンは全車直噴化されて、シフトレバーがステアリングコラムからフロアに変更されている。‘86年にはAMTのNAVI-5が設定され、2ペダルでの運転操作を可能にした。さらに91年にはAT仕様も登場し、MT運転の煩わしさから開放されたいドライバーに歓迎されることになった。

‘93年にはエルフ、5代目へとフルモデルチェンジ。角形4灯だたヘッドライトは異形の2灯式となり、ウインカーも一体となって両脇へと広がる安定感を感じさせる顔つきとなった。登場後には2ペダルAMTのスムーサーEやハイブリッドなども登場し、パワートレインも充実ぶりを誇るようになったのだった。

5.0.2

2006年には6代目にフルモデルチェンジを果たす。ヘッドライトは縦長になり、上辺の斜めに切れ上がるラインは強調され、フロントグリルはパネル一体型となり、シンプルでスッキリとした印象のトラックに仕立てられた。

AMTは副変速機を利用したスムーサーExへと進化し、ディーゼルエンジンも全車コモンレール化して、ブレーキも全輪ディスクブレーキ化された。厳しくなる排ガス規制や燃費基準に持ち前の技術力で対応していったのもこの頃がピークだ。

‘18年にはカメラを採用したプリクラッシュブレーキなどのADAS(先進運転支援システム)を搭載、エンジンには排気の後処理装置としてSCR触媒を採用した。

そして2023年、エルフは現行モデルの7代目へとフルモデルチェンジする。グリルとヘッドライトをブラック仕上げ&クロームモールで斬新な印象とするほか、新開発のDCT、ISIMを搭載し、BEVのエルフEVもラインナップした。

これからもエルフは街で活躍するトラックであり続けることだろう。

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