トラックの運転業務は、様々な問題から過酷な状況に陥っている。なかでも長距離輸送はめまぐるしく変化をする交通状況において、到着時間を意識しながら運行しなければならず、ドライバーの精神的・肉体的負担がたいへんに重い。このような状況が続けば疲労が蓄積し、重大事故につながる危険性を孕むことになる。
そこで、厚生労働省はドライバーの労働条件改善するために、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」を出している。このなかに規定されているのが、いわゆる「430休憩」だ。これは、ドライバーの連続運転時間を4時間に制限し、それ以内に30分の休憩を設けなければならないというものだ。休憩の取り方には一定の融通があるものの、1回の休憩では連続して10分以上取得しなければならない。
トラックにはタコグラフが装着されているために、規定通りに休憩が取られているか否かは一目瞭然だ。ただ、これは「法律」ではないので違反に対する刑罰はない。しかし、守らなければ行政処分として当該車輌の使用停止や、事業者に対する事業停止などの命令が下される可能性があるのだ。
そのため、事業所はドライバーに「430休憩」を守るように厳しく指導をすることになり、ドライバーは時間が来たら休憩をとるために、トラックを駐車させる必要が出てくる。高速道路の場合はその場所がサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)になるので、限られた大型車駐車スペースを巡って争奪戦が繰り広げられることになるのだ。場所を確保できなかったトラックが、通路やSA・PAの誘導路に並ぶといった現象には、こういった背景があったのである。
駐車スペース以外の場所に大型トラックが停まるという状況は、他の車輌の通行を妨げるだけではなく、最悪の場合は事故を誘発することにもなりかねない。とはいえ、限られた敷地のなかで大型車の駐車スペースを増やすことは容易ではないのである。また、単に駐車可能台数が少ないというだけではなく、極端に長い時間駐車をしていたり大型車スペースに乗用車が停まっていたりするなど、使用者のマナーの悪さにも少なからず原因があるのだ。
そこで、2023年9月に高速道路管理会社3社(東日本高速道路・中日本高速道路・西日本高速道路)は、全国11カ所のSAに「短時間限定駐車マス(大型車輌を対象に、使用時間を駐車開始から60分以内に限定したマス)」を設置して、実証実験を開始すると発表した。これは、先述のような問題が多く発生しているSAを対象に当該マスを設置することで、トラックドライバーの休憩機会の変化・周辺休憩施設などの混雑状況・効果的な当該マスの設置位置などを検証しようというものだ。その目的は、大型車ドライバーがより確実な休憩機会を得られるようにすることにある。
設置場所は、
東北道:上り蓮田SA・上り上高地SA・下り安達太良SA・下り国見SA
東名:上り足柄SA
山陽道:下り福山SA・上り吉備SA・上下龍野西SA
中国道:下り美東SA
九州道:下り古賀SA
である。 当該マスについては路面表示や看板表示がされ、ドライバーから識別しやすいように配慮されている。また、60分ルールが守られるように、監視体制の強化やカメラの画像処理技術導入などを行うとのことだ。こういった試みにより、トラックドライバーの負担が少しでも軽減できるようになることを願ってやまない。