トラックが運ぶ荷物は、実に多種多様だ。中でも小口のものは、小さな荷物がたくさんあるので扱いが煩雑である。同じ場所に送るルート配送の場合には、それらをひとつにまとめるためのかご車やBOXを使うことが多い。ここに、荷主からパッケージングされた荷物を積み込めば、一度にたくさん運べるので荷積み・荷降ろしが効率的に行なえるわけだ。
荷主から渡される荷物の多くは、段ボールパッケージに入っている。たいてい長方形の立方体になっており、安定した形だから持ちやすいし地面や荷台にも起きやすい。段ボールは比較的厚手の紙が二重になっており、その間に波を打った紙を挟み込む構造なので、一定の衝撃や保温性を持った優れたパッケージ材といえる。
しかし、その中身はさらに進化をしているのだ。段ボールの荷物のなかには、振ってもカタカタと音のならないないものが多くなった。これは、緩衝材などで荷物を押さえているからだが、さらに進んだ技術を使用しているものがある。それは、中身に合わせて製作されたオリジナル仕様になっているタイプだ。
段ボールの加工技術は著しい進化を遂げており、荷物が動かないようにきちんとはめ込めるような加工ができる。それも、一枚の段ボール板を折り紙のように組み立てるだけで作れるようになっている。付属品がある場合は、それらも同様にはめ込むようにして梱包ができる。これなら、緩衝材を使用しなくても、荷物が傷ついたり壊れたりすることなく配送ができるのだ。
こういった梱包材は、発泡スチロール製のパッケージでも存在する。段ボールの場合はそれぞれの荷物に合わせてオリジナルで作られるが、こちらは主に壊れ物を対象としたある程度汎用性を持つタイプである。たとえば、卵やボトルの輸送に使用されるものはその代表格だ。とくに卵は品質を保つ必要があるので、パッケージの蓋をテープで留めたときにも呼吸ができるように、通気口やスリットを設けるなどといった工夫がしてある。ただ、これらは荷主が採用するか否か決めるパッケージなので、トラックドライバー側から要求するのは難しい。
配送事業者は様々な荷物を運ぶので、オリジナル性の高い梱包材を独自に採用するのは難しい。そこで、小口搬送には汎用性・再利用性の高いオリコン(折りたたみコンテナ)を使うことが多いのだ。これは1980年代ごろに、専門店の専用物流便に採用されて普及したといわれており、すでに半世紀程度の歴史がある。最大のメリットは再使用であり、そのころからSDGsを見据えた人物がいたということであろう。
当初から完成度が高く、規格がある程度統一されていたことから基本的な構造は変わっていない。しかし、現在のオリコンをひとことでいえばたいへん使いやすくオシャレになったといえるだろう。側面や上部に半透明な素材を使用して中味が確認できるようにしたほか、上部以外に窓を設けて積み重ねた状態から中味を取り出せるようにするなど、細かな工夫がされたタイプが増えている。
また、側面などにきれいな印刷をすることで梱包材としてだけではなく、そのまま陳列できるような見た目に映えるデザインのものもある。梱包材は単に荷物を効率的に運んだり、衝撃から守ったりするだけのものではなく、物流業界と同様に人手不足に悩む小売業にとっても、陳列の手間を省く要素が強くなってきているのだ。いずれ、トラックのコンテナをそのまま店舗に設置すれば、すぐに売場になるようなアイデアも出てくるかもしれない。