【トラックの名車たち】昨年60周年を迎えた小型トラック、三菱ふそうキャンターの変遷を追う

キャンターは三菱ふそうの小型トラックだ。そのデビューは今から61年前の1963年、ふそうブランドが投入した初めての小型トラックだった。

キャンターとは、英語で馬が駆け抜けることを意味する言葉で、駿馬の健脚と軽快な走りをイメージし、優れた走行性能に加えて経済性を兼ね備えていた。2トン積みの本格キャブオーバートラックは68psのディーゼルエンジンを搭載し、粘り強い走りと機動力、優れた経済性を両立していたのだ。

その後キャンターはモデルチェンジを経て進化していく。’64年には早くもマイナーチェンジを行い、ヘッドライトを丸目2灯から4灯へと変更し夜間走行時の安全性を高めた。

‘68年にはフルモデルチェンジを行い、ヘッドライトはグリルに組み込まれ、初代の愛嬌のある顔立ちから精悍な顔つきになり、エンジンはパワフル&ガソリン車も用意されて、より幅広い用途で使われるようになった。

‘73年になると再びフルモデルチェンジを行ない、3代目へ。2代目のマイチェンジに採用されたグリルのV字がより強調されて、通称Vキャンターと呼ばれるようになった。さらにボディのバリエーションが増えて2.5トンや3トン車も登場。エンジンもよりパワフルな仕様が用意されて、機動力を高めるのだ。

‘78年には4代目へとフルモデルチェンジ。ワイドキャブが登場し、現在の三菱ふそうが再現したブラックベルトと呼ばれる、フロントマスクを走る黒いグリルが取り入れられたデザインが初めて導入されたモデルとなった。

‘83年にはキャンターをベースにしたウォークスルーバンも登場し、宅配便などの需要増に応えることになる。

‘85年にはフルモデルチェンジし、5代目キャンターが登場。新開発の130psターボエンジンを搭載したモデルを発売し、走りや安全性、操作性やキャビンの心地よさなどを改善した。フロントブレーキはディスクブレーキとなり、放熱性が向上して連続した下り坂でも安定した制動力を発揮できるようになった。

バブル期の白ナンバートラックなど、この5代目キャンターはかなり街で活躍したモデルだったから、記憶に残っている方も多いことだろう。

‘93年にはキャンターは6代目へとフルモデルチェンジ。ラウンドキュービック型と呼ぶ丸みを帯びたキャブデザインは空力性能を向上させたものだが、ヘッドライトが横長でグリルが狭くなり、先代の精悍な印象からちょっと優しい表情になった。ディスクブレーキはツインキャリパーとなってさらに強化され、ディスクブレーキでも安心の制動力を確保したのだった。

そして2002年、キャンターは7代目へ。今度はコーナーにライト類をまとめたフロントマスクとなり、新しさと力強い印象を兼ね備えたデザインになった。インテリアではトラックでは初めてインパネシフトを採用した。またハイブリッド車を追加したこともトピックだった。

‘10年になると8代目キャンターが登場し、メカニズムも一気に進化する。フィアットパワートレインが開発したDOHCヘッドのディーゼルエンジンにDCTを組み合わせて、パワフルでスムーズ、快適でエコな走りを実現したのだ。

‘16年にはマイナーチェンジにより内装を充実させ、燃費性能もアップ。’17年には国産初の小型トラックEV、eキャンターがデビューしている。

‘20年には現行モデルの9代目へとチェンジ。キャブはそのままマスクを変えて、左折巻き込み事故などを防ぐアクティブサイドガードアシスタントを小型トラックでは初めて搭載した。

‘23年にはeキャンターも9代目キャンターと同じ仕様に。ますます充実していくキャンターシリーズなのであった。

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