
日野自動車は、もともといすゞの日野工場だったものが独立し、トヨタへのOEMなどを通じてトヨタのグループ企業トラック部門へと発展した企業だ。
そんな日野自動車の足跡がよくわかる博物館の存在をご存知だろうか。日野オートプラザは、日野自動車の羽村工場からもほど近い東京京都八王子市にある。
敷地内に足を踏み入れると、まずは最新のトラック、そしていにしえの名車たちが屋外展示されており、入館者を出迎えてくれる。円をモチーフに様々な部分に取り入れた建物は、なかなかユニークな造形で日野自動車の研修センターも兼ね備えており、かなり大きなものだ。
エントラントには、日野自動車のルーツとも言える東京瓦斯電気工業が作った最初のトラック、TGE-A型が展示されている。ホイールが木製で、ヘッドライトはガス灯というのは1917年ならではの仕様であり、実車は近年作成されたレプリカではあるものの、当時のまま忠実に再現されている。エンジンやラジエターなども現代のトラックとはまるで異なり、シンプルで手作り感に満ちた造りだ。

その後ろには世界のクルマにまつわる歴史や日野自動車に関する歴史が年表になっており、いかに日野自動車が長い歴史を刻んできたかが感じられる。

そこに配されたエレベーターで2階へ上がると受付がある。そこにはミニカーや歴史背景を感じさせるジオラマ、そして内装などで日野のトラックを感じさせる空間だ。そんな感じで日野自動車の歴史の全体像が把握できるのが、2階の魅力だろう。

2階を堪能した後は、スロープで再び1階へと舞い戻る。しかしそこは戻ったでのはなく、また刺激的な日野のヘリテージな世界が広がるのだ。
歴代の日野が生産したモデルたちが絶品のコンディションで維持されているのだ。日野コンテッサの市販モデルやレーシングカー、プロトタイプなど驚くほど速さと美しさにこだわった時代が伝わってくる。


その一方でボンネットバスやFFワンボックスバンのコンマースなど挑戦的なモデルの実車は、まさに日野が続けてきた挑戦の歴史を感じさせるものなのだ。
そして日野デュトロZ EVで結実したFF超低床プラットフォームを用いた小型商用車のプロトタイプが展示されていたり、これまでに搭載された歴代の名機エンジンが説明も添えられて分かりやすく展示されている。
圧巻は建物の奥に位置する古の内燃機関たちであろう。戦前、戦中に開発製造された様々な構造のエンジンが、様々な場所から借り出され発掘されて展示されている。

それはトラックに積まれたクルマ用のエンジンであったり、航空機用のヘッドが底部にある逆転したエンジン、そして星型エンジンなどが所狭しと並べられている。中には戦火を浴びて損傷したものまであり、なんとも言えないオーラを感じさせるのである。
空襲などの被災で損傷しつつも原型を保っている星型エンジンを見るだけで、当時のエンジニア、戦争兵への思いが込み上げてくるものだ。この空間には間違いなく日本のエンジン、内燃機だけでなく日本を推し進めた力というものが漂っている。