地球環境を守るために、車輌のEV化が進んでいる。まだ解決するべき問題は多いが、その方向性が変わることはないだろう。建設機械も同様なのだが、街中を走り回る自動車とは少し事情が異なるといわれている。それは、仕事量の大きさや使用される環境に大きな違いがあるからなのだ。
建設機械は大きなものなどを押す・運ぶ・吊り上げるといった目的を持って、土木建設現場で使用される特殊な車輌だ。大きなパワーが必要になるから、電動化するには大容量のバッテリーを用いなければならない。必然的に、車輌コストが跳ね上がる。
しかし、建設機械は多くの場合に限られた閉鎖スペースで使用されるため、そこに充電設備など必要なインフラを用意することで、基本的な運用が可能になる。現在のように、EV化の試行錯誤が続いている状態であれば、建設機械は絶好の実証実験対象といえるわけだ。
実際に、小型建機はすでに実用段階にあるといっても過言ではない。大型の建設機械でも、タダノの電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-250N」が、2023年12月に世界初の実用機として市場投入された。この車輌は、運転席からクレーン操作と走行の両方をコントロールでき、公道走行が可能な汎用性の高いタイプ。もちろん、同車輌は走行・クレーン操作共に電動である。
大型建機の仕事量や公道走行を考慮し、搭載されたバッテリーは226kWhのリチウムイオン電池だ。CHAdeMO方式の急速充電に対応し、2.5時間程度で充電することが可能。AC200Vの三相商用電源を使用した普通充電も可能で、こちらは8時間程度で満充電に至る。業務終了後に充電を開始すれば、翌朝には完了しているということだ。
満充電時のクレーン稼働時間は約11時間(クレーン作業のみの場合)あり、ほぼ1日充電することなく作業が可能。同様に、走行距離は約70㎞(走行のみの場合)に及ぶ。車輌の仕事能力は、最大つり上げ性能25トンで最大速度は49㎞/h。これらのスペックを見ると、ディーゼル動力のタイプとあまり遜色がない。ちなみに、最大作業半径は34mで最大地上揚程は44.2mである。
ディーゼル機関はコストや仕事量の面から、これまで建設機械にとって最良のエネルギー源であった。しかし、エネルギーの変換効率を考えたときに、電気に勝るものはないのである。それは、明確な数値としてはっきりと表れているのだ。ガソリンは変換効率が30%程度だが、ディーゼルはそれよりも高くて約40%ある。ゆえに、トラックや建設機械はディーゼル機関が多い。しかし、電気はなんと80%に及ぶという。それどころか、条件が整えば90%も夢ではないのだ。
こういった背景から、建設機械メーカー各社やトラックメーカーは車輌の電動化を積極的に進めている。電気エネルギーは環境問題・エネルギーの効率化といったことだけではなく、安全機能や自動運転といった最新技術の動力源としても利用価値が高いのだ。ダム・空港建設といった大型土木現場で活躍するダンプトラックなどには、自動運転技術が投入され始めたという。これからは、建設機械が車輌進化の最先端を進んでいくようになるのかもしれない。