コストとの戦い、工夫を重ねたトラックの軽量化

飛行機は空を飛ぶので、軽い方がよいことは容易に理解できよう。実際、塗装にまで工夫を凝らして機体重量を落とす努力をしているという。東海道新幹線は卵型フェイスの0系や2階建て車輌を連結していた100系に比べ、最新車輌のN700Sはアルミ合金を使うなどして車体を大幅に軽量化した。これらはいずれも、省エネとハイスピード化が主な目的である。

同様に、カーメーカーも軽量化には熱心に取り組んでおり、省燃費と運動性能の向上などに成果を挙げている。ユーザーにとっても、重量税の負担を考えればクルマは軽い方がいいのだ。クルマの軽量化といえば速さを競うレースカーを思い浮かべるが、こちらは運動性能と高速化が主な目的だといえよう。

しかし、トラックはこれらと少々事情が違う。そもそも、トラックにはリミッターがあって、最高速度が90㎞/hに制限されているのだから、高速化を目指すことには意味がない。運動性能についても安全性に支障がなければ、乗用車のようなスペックが求められるわけではないのだ。ポイントになるのは、「どれだけたくさんの荷物が積めるか」なのである。

車輌には「車輌総重量」が定められており、その計算式は、

車輌総重量=車輌重量+最大積載量+55㎏×乗車定員

である。トラックは荷物を運ぶ車輌だから、輸送効率を考えれば最大積載量を多くとることが望ましい。すなわち、

最大積載量=車輌総重量-車輌重量-55㎏×乗車定員

となるから、乗車定員の重量が変わらないのであれば、車輌重量を軽くするとたくさん荷物が積めるということになるのだ。

そこで、様々な軽量化が図られることになる。まず足回りでは、アルミホイールの採用が考えられよう。純正の鉄製ホイールは剛性に優れるものの、アルミホイールに比して重量は相当のものだ。とくに、大型トラックではその差が大きい。また、同じアルミホイールでも、1ピース鋳造のものより2ピース・3ピースの鍛造タイプは、軽量なだけではなく剛性も高まる。

後輪タイヤについては、ダブルタイヤではなくスーパーシングルタイプにすると軽量化を図れるのだ。トラックの後輪は、荷重を支えるために1軸4輪になっているものが多い。これを、2輪分の幅を持ち強度を確保したスーパーシングルタイヤに変えることで、1軸当たり100㎏程度の軽量化が可能になるという。

荷台部分でも工夫がされている。ポイントは、アルミ合金パネルだ。これは新幹線がそうであったように、素材を鋼板から変更することで、大幅な軽量化が可能になるのだ。くわえて美観や耐久性も向上する。デッキには、木材を使うことも有効だ。衝撃吸収性があるので、揺れや振動に対して積み荷のダメージを抑える効果が期待できる。

冷凍・冷蔵車の場合は断熱性を求められるが、これらも軽量で高性能な素材が次々開発されている。外板ではカーボンファイバー(CFRP、炭素繊維強化プラスチック)といった、軽量且つ丈夫な素材の採用も増えた。

ただ、これらの軽量化に貢献するパーツや素材は、従来の鉄ホイール・ダブルタイヤ・鋼板などに比べて、導入コストの高い点がネックになっている。輸送に付帯するサービスなどを含めた全体を長い目で見れば、決して損をすることはないのだろうが、中小・零細事業者には解決が必要な問題だといえよう。

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