
地震発生から、すでに8ヶ月が過ぎたのに、今だに瓦礫の撤去が進まない能登半島。被災地の方々は不自由な生活を強いられている方も多い。さらに豪雨災害までやってきて、泣きっ面に蜂だ。
大阪万博も迫っていることから、作業員が足りないというのも復興が進まない理由らしい。今、被災して困っている人々の生活より、世界中から来場者を集めるために万博会場を作る方が先決なのだろうか。
ところで被災地での瓦礫の撤去や、新たに建築物を建てようとなったら、工事のための建設機械は欠かせない。そしてそうした建設機械を操縦するオペレーターも必要だ。
しかし前述のように作業員が足りないのだから、オペレーターを確保するのも大変だ。そこで解決策として考えられるのが建機の無人化だ。そう、オペレーターを乗せずに建機を動かそうというのである。
これにはふたつの方法が考えられる。ひとつはクルマの世界で開発が続けられている自動運転を建設機械にも導入する、というものだ。ホイールローダーやパワーショベルを自動運転させて、それらが汲み取った土砂を自動運転のダンプカーに積み込み、運ぶというシステムはすでに開発されている。海外では採石場などで実用化されて、すでに稼働しているところもある。
しかし瓦礫の撤去となると1軒1軒が損傷の仕方や構造なども異なり、道路なども複雑に絡んでくるため、自動化することは難しい。
そこでもう一つの方法が遠隔操作だ。建機自体にオペレーターは乗り込まないが、別の場所から無線で制御することにより、遠隔で操縦するのである。

これはオペレーターが不足している現在、複数の地域を兼務してもらうことが可能になる技術だ。遠隔操作なら、どんなに離れた地域同士でも建機を操縦することができる。
東京にいるオペレーターが能登半島にある重機を動かして瓦礫の撤去作業ができるだけでなく、今日は富山、明日は大阪といったように、毎日働く現場が異なっても移動の必要がなく、半日ずつ作業することだって可能になってしまう。
自動運転も無人化により省人力化を実現するが、実際には万一のトラブル防止のため遠隔でも人間が監視することになる。それは一人で何台もの建機を管理することは可能になるが、現在でも産業ロボットなど工場の生産機械はそのように管理しているので、技術者は対応できるだろう。
それに建機もクルマも自動運転になれば、ただヒトは利用するだけでいい、というものではない。ある程度の期間利用した機械はメンテナンスを必要とすることになる。つまり人手は無くならないのである。
そういった意味では遠隔操作しない現場への運搬作業や一定間隔でのメンテナンスの必要性から、重機が活躍する現場から作業員がいなくなることは無さそうだ。
また遠隔操縦は崖崩れの現場でさらに二次災害が起きそうな地点など、危険な場所で作業しなければならないケースなどにも利用できる。自動運転を目指すよりも、遠隔操縦で幅広い地域で利用される方が現実的な分野もあるのだ。
