
いすゞは今でこそトラック専門メーカー(海外ではSUVやSUTも販売しており人気だが)となっているが、かつては乗用車も開発、生産販売していた。いすゞジェミニは「街の遊撃手」のキャッチフレーズで地下鉄のホームを走り回ったり、2台並走して踊るように走り回るTVCFが話題になったものだ。
初期のいすゞ車はデザインの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロにスタイリングデザインを任せ、どこよりも気品のあるスポーティなデザインのクルマを作り上げていた。現在でもギガやエルフなどのトラックのデザインにはこだわりを感じさせる。

そんないすゞのモノづくりへのこだわりが感じられる施設が「いすゞプラザ」だ。これはいすゞの藤沢工場に隣接している技術博物館で、建物の外観や内装などもすべていすゞのデザイナーによって手がけられている。ユニークな造形の建物だけでなく、館内の表示や階段、トイレにまでいすゞのデザインが感じられるのだ。
館内にはいすゞの最新トラックやバスが展示されているのはもちろん、普段はお目にかかれないような特殊な車両や海外モデルなども展示されている。
圧巻はジオラマだ。架空の地域をジオラマで作り上げ、そこで働くクルマの動きを再現しているのだ。時間の経過とともに日差しや昼夜も入れ替わり、街や港で人々がクルマを使ってどんな生活を営んでいるか感じ取ることができる。


トラックやバスに自由に触れることができるほか、いすゞの歴代モデルでもかつての名車などが新車のようなコンディションで展示されている。主要モデル以外はこれまで生産された全モデルのミニチュアモデルがずらりと並べられている。






ミニチュア模型で工場の生産ラインを再現しているのも、セクションによって動きを見せたりして凝っている。あたかも自分がトラックのキャブを塗装している気分になれるバーチャルな塗装シミュレーターなどスタッフが知恵を絞っている展示物ばかりだ。



構造や生産の仕組みなども詳しく学べるのは、社会科見学としても非常に有意義な施設だと思う。実際学校から見学の申し込みは多く、地元の小学校などは毎年生徒を引き連れてくるそうだ。
設計図や実際の部品の断面まで展示して、いすゞのエンジニアがどうやって部品を考えているか、子供にも分かりやすい内容としているのだ。これは未来のエンジニアを生み出すきっかけにもなりそうだ。


日本のクルマの黎明期から現在のはたらくクルマ、そしてその技術レベルの高さに触れることができるのは、かなり貴重な施設と言える。
消防署などとコラボした消防関連のイベントやワークショップなど、時々開催される特別展、企画展などの催しも興味深いので、詳しくはいすゞプラザのHP(https://www.isuzu.co.jp/plaza/)をチェックしてみてほしい。
何といっても入場料が無料というのもいすゞの心意気を感じさせる。完全予約制なので、事前予約だけは必要だが、行けば大抵のトラック好き、クルマ好きは満足できる内容だ。